研究課題/領域番号 |
17K18891
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
大石 泰丈 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80360238)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | フォトニック結晶ファイバ / 非線形光学 / 光パラメトリック増幅 / 四光波混合 / コヒーレント光 / カルコゲナイドガラス |
研究実績の概要 |
・四光波混合によりファイバ中で励起光からシグナル光とアイドラー光を生じる.励起光の波長によりシグナル光とアイドラー光の発生する波長を制御できる.特に正常分散波長領域にある励起光を入射させるとアイドラー光は中赤外よりも長波長に発生する.また、アイドラー光には、励起光のスペクトルが転写されるため、周波数コムを入射すれば、中赤外からテラヘルツ領域にかけて周波数コムが得られ、精密分光分析に応用が可能になる.広い領域で周波数コムを発生領域可変で発生させることが可能な技術はこれまではない.そこで波長分散特性を用いてアイドラー光の発生を解析するための非線形シュレディンガー方程式によるシミュレーション手法の開発を進めた.その結果,連続光およびパルス光、さらには周波数コムを入射したときに発生するアイドラー光を解析できる解析手法を確立した. ・2μm帯に零分散波長をもつカルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを作製して,その波長分散を考慮し,開発した非線形シュレディンガー方程式による四光波混合によるアイドラー光の発生解析を行った.その結果,2μm帯の励起により4μmを超える波長域にアイドラー光が発生できることを明らかにした.実際,カルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを用いて実験的検証を行った結果,4.2μmにアイドラー光が発生することを実証した.光ファイバを用いて4μmを超える波長域においてアイドラー光を発生した例はこれまでにはなく,初めての結果を得た. ・また,中赤外光発生の手法として,高次ラマン散乱による中赤外光発生を検討した. 1.5μm帯励起によるAsS系のカルコゲナイド光ファイバによる5次のラマン散乱により2.6μmの発生を確認した.カルコゲナイド光ファイバを用いた5次のラマン散乱の観測は初めてであり,本現象を利用して中赤外光発生のための励起光が得られることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・正常分散波長領域にある励起光を入射させると広い波長域で四光波混合によりファイバ中で励起光からシグナル光とアイドラ光を生じる.特に、アイドラー光には、励起光のスペクトルが転写されるため、周波数コムを入射すれば、中赤外からテラヘルツ領域にかけて周波数コムが得られ、精密分光分析に応用が可能になる.広い領域で周波数コムを発生領域可変で発生させることが可能な技術はこれまではなかったが,波長分散特性を用いてアイドラー光の発生を解析するための非線形シュレディンガー方程式によるシミュレーション手法の開発手法を確立し,今後の研究の基礎を築いた. ・2μm帯に零分散波長をもつカルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを作製して,その波長分散を考慮し,開発した非線形シュレディンガー方程式による四光波混合によるアイドラー光の発生解析を行い,2μm帯の励起により4μmを超える波長域にアイドラー光が発生できることを明らかにした.実際,カルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを用いて実験的検証を行った結果,4.2μmにアイドラー光が発生することを実証し,開発した解析手法の妥当性を検証した.さらに光ファイバを用いて4μmを超える波長域においてアイドラー光を発生した例はこれまでにはなく,初めての結果を得た. ・新たに中赤外光発生の手法として,高次ラマン散乱による中赤外光発生を検討し, 1.5μm帯励起によるAsS系のカルコゲナイド光ファイバによる5次のラマン散乱により2.6μmの発生を確認した.カルコゲナイド光ファイバを用いた5次のラマン散乱の観測は初めてであり,本現象を利用して中赤外光発生のための励起光が得られることを示し,今後の研究に利用できることを示した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度のファイバ構造とアイドラー光発生のための波長分散特性の相関に関する解析結果を基に、アイドラー光発生による中赤外からテラヘルツ領域でのコヒーレント光の発生を検証する。そのために必要な下記の項目の研究を推進する。 (1)アイドラー光発生のための波長分散特性を実現するために必要なハイブリッドPCFを実現する。 (2)1から2μmの近赤外光パルスを入射させ、中赤外からテラヘルツ領域でのコヒーレント光発生を実現する。 (1)の研究では、ハイブリッドPCFのコア・クラッド素材として、カルコゲナイド・テルライトガラス(Ge-Ga-Sb-S・TeO2-ZnO-Bi2O3-Li2O)、カルコゲナイド・カルコゲナイドガラス(AsSe・AsS)、テルライト・フォスフォテルライトガラス(TeO2-La2O3-WO3-MoO3-Na2O・TeO2-ZnO-Na2O-P2O5)、テルライト・フォスフェイトガラス(TeO2-Bi2O3-Na2O-ZnO・P2O5-ZnO-Na2O-K2O)等の組み合わせが考えられる。それらガラスの組み合わせで0.2以上の屈折率差が実現でき、ハイブリッドPCFの素材として使用できる。組成による屈折率分散の変化を測定しつつ、最適組成を見極め、アイドラ光発生のための波長分散特性を実現するために必要なハイブリッドPCFを実現する。 (2)の研究では、1から2μmの波長域でフェムト秒からピコ・ナノ秒域の光パルスを発生させる光ファイバレーザを組み立てており、それらを光源として中赤外からテラヘルツ領域でのコヒーレント光発生を検証する。発生波長とファイバ構造との相関を検証し、20%以上のアイドラ光の発生効率実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた国際会議出席をとりやめたこと、および次年度使用の消耗品購入に充てたため。
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