水系感染性細菌の中でも特に世界中で甚大な健康被害を出している赤痢菌(Shigella)に着目し、赤痢菌に感染する溶菌性バクテリオファージ(以下ファージ)の探索と特性解析を行った。都市下水中から単離した4株のファージ単離株のうち、最も宿主範囲の広かったSfPhi01について、全ゲノム情報解読に基づく特性解析を実施した。SfPhi01株を宿主菌と共培養することによりファージ培養液を作製し、更にファージ画分を濃縮することで高濃度ファージ液を得た。この高濃度ファージ液からファージDNAを抽出・精製し、次世代シークエンシングによる全ゲノム解析に供した。ゲノム解析の結果、このファージは全長168kbの直鎖状二本鎖DNAをゲノムとして有することが分かった。データベース上のファージ遺伝子情報と照合した結果、このファージはMyoviridae科に属する新規ファージであることが明らかとなった。赤痢菌に感染するファージに関する新たな知見を得ることができたと言える。 また、環境中に広く存在する病原細菌として知られているKlebsiella属細菌の溶菌性ファージの探索を行った。具体的には、流入下水試料からKlebsiella属細菌を宿主菌としてファージを集積した後、スポットテストによりァージの存在を確認した。ファージが確認された試料についてプラーク単離を3回繰り返すことで計25株のファージを単離した。単離ファージ株を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、形態学的特徴からMyoviridae科とに属すると判断された。
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