本年度は、複数の微生物グループを標的として同時に定量(マルチプレックス定量)を実施するためのオリゴDNAプローブ設計指針の構築を行い、さらに環境試料から抽出したRNAについてマルチプレックス定量を実施した。それぞれ標的グループの異なる8種のプローブを用いて評価したところ、塩基長が17~22塩基、⊿G°1が-13~-19 kcal/molであれば、交雑効率は0.42~0.81であり、定量するのに十分な交雑効率が得られ、本手法に使用可能であることが明らかとなった。さらに嫌気性廃水処理UASBグラニュールや嫌気性消化汚泥から抽出したRNAに対して、Bacteria、Archaea、Methanosaetaceae、Methanomicrobiales、MethanobacteriaceaeをRT-qPCR法と本手法により定量した。RT-qPCR(TaqMan法)では複数種の同時定量は実験条件の設定が困難であったため1グループを標的として定量したが、本手法では3グループ同時のマルチプレックス定量を行った。本手法で測定までにかかった時間はqPCRと同等(2~3時間)であった一方、本手法はマルチプレックス定量が実施できるため、測定回数が少なくて済み、時間効率の良い定量評価が可能であった。また、標的としたMethanosaetaceaeの存在割合が多い試料については、RT-qPCR法ではMethanosaetaceaeの存在割合がArchaeaの存在割合を上回ってしまうようなケースが見られたが、本手法ではそのようなバイアスは見られず、良好な定量結果が得られた。今後は、プローブ-RNA交雑物のより効率的な回収方法を検討することで、よりハイスループットな定量法としての確立が期待できる。
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