自己組織化マップ(SOM:Self-Organizing Map)は,大脳視覚野のモデルであり,目から入ってきた画像情報の類似度をマップ(地図)上の位置関係で視覚的 に表現することができる.これは,脳の持つ基本的な情報処理機能であり,画像(視覚情報)だけでなく音(聴覚情報)についても適用可能である. 本研究の目的は,この脳モデルを用いて,これまで点検者(人間)が行っていた切羽画像等の認識を機械に代替するためのシステムを構築することである.建 築土木業界では,トンネル等のインフラストラクチャの老朽化が急速に進んでいる上に,これらの点検者が減少しており,その機械化が急務となっている.本研 究では,機械学習の1つであるSOMを用いて,これらの点検を可視化・自動化するためのアルゴリズム開発とその専用システムの構築を行う. 最終年度であるR元年度は,これまで開発してきた専用システム(SOMハードウェア)の詳細な性能評価を行うとともに,複数のシステムをネットワーク接続することによるマルチSOMハードウェア化を行いその性能を実測評価した.また,ハードウェアの中心となるzynq(プロセッサ内蔵型FPGA)についても,回路サイズの異なったzynqを用いることで性能差を比較評価した.一方,SOMと他のアルゴリズムとの比較も必要であり,比較アルゴリズムとしてサポートベクターマシン(SVM)をとりあげた.この評価結果によれば,SOMとSVMの認識性能は同程度であることが分かった.また,この開発(SVMによる認識ツール開発)により,これまで既に開発したマルチレイヤ―パーセプトロン(MLP)による認識ツールも含めて,SOM,SVM,MLPによるアンサンブル学習が可能となる.本年度は,SOMの発展として,このアンサンブル学習によるシステムの実用化検討も行った.
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