研究課題/領域番号 |
17K18903
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
Kim Sunmin 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10546013)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 豪雨予測 / 機械学習 / 畳み込みニューラルネットワーク / 気象観測データ |
研究実績の概要 |
本研究は,人工神経回路網(Artificial Neural Network; ANN)の深層学習(Deep Learning)アルゴリズムを活用して気温,気圧,水蒸気量などの気象因子情報を縮約し,その特徴を結びつけることにより,大流域を対象として数時間から数日先までの降雨予測が可能な新たな概念の短期降雨予測モデルを作成することである.さらに,深層学習を活用したモデルの作成に止まらず,様々な形の深層学習構造と入力の組み合わせを用いて学習アルゴリズムの特徴を調べることにより,定量的な値として出力が要求される工学計算分野でのANNの活用性を広げることである. 研究の初年度である平成29年度の研究では,気象庁のAMeDAS観測情報を用いて都市範囲のレベルで集中豪雨発生を予測できる機械学習によるモデルを作成した.機械学習の中で特に画像認識の分野で活躍している畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の応用を考え、集中豪雨予測モデルを考案した.具体的には,AMeDAS 気象観測データの10 分ごとの観測値から降水量、気温、日射量、風速、風向の5つの気象変数を使用し,京都周辺から上記の気象変数が得られる8地点を選び出して実験を行った.活用データは2008年から2017年の10年間の観測データの内、豪雨の発生の多い6月から9月のデータを中心に学習と検証を行った.今年度作成した実験モデルでは,実際降った豪雨に対して7割以上予測できたが,降らない場合にも降ると予測する誤差が大く見つかったので,この誤差を減らすための改良を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度では,基礎的な空間・時間解像度の情報を用いてANNの深層学習アルゴリズム基本設計を行いANNの構造および学習アルゴリズムをテストすることができた.また,以下の分析ポイントに対しても必要な経験と知識を得ることができた. (1)深層の中で行う情報の変換:ANN深層学習アルゴリズムの画期的な面は,関連性がありゆる様々な入力情報を与えればその中で必要な情報だけ取り上げてその特徴を圧縮し,出力との最適な関連性を取り上げる. (2)入力や隠れ層構造による出力の感度:与えられた様々な組み合わせの入力気象因子がどのようなパターンで出力(予測降雨)の精度と関係があるのかを調べて,その理由を気象学の観点から分析する. 今年度では、複数の観測地点の時系列変化に対しCNNの応用を考え、降水量に閾値を設定することで近似的な集中豪雨の予測を試した.実験結果からモデル精度の改良は必要であると考えられるが、集中豪雨の発生予測に対してCNNの適用が可能であることが示された.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は高解像度GCMおよびRCM出力データを用いて,以下の学習アルゴリズムをテストして定量的な降雨予測モデルを作成する. ・対象地域:利根川流域と淀川流域をそれぞれ含む(180kmX180km)の領域を設定する.この領域は,60km格子の場合は3X3,20km格子の場合は9X9,10km格子の場合は18X18のレベルで,入力情報の空間解像度を上々に細かくして分析を行う. ・利用データ:気候変動予測情報創生プログラムで計算された日本領域の気候モデルNHRCM5km現在気候出力を利用する. また,重要分析ポイントとして,深層の中で行う情報の変換および入力や隠れ層構造による出力の感度を気象学の観点から分析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度に並列計算機システム(200万円程度)を購入する計画だったが,初年度に作成された予測モデルはまだ計算量が大きくなかったため,デスクトップ用計算機で実験することになった.次年度使用額で次年度に大型計算機を購入する予定である.
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