近年,激甚な豪雨による高水が頻繁に発生して河川堤防が破堤しており,その防止が重要な課題となっている。日本の河川堤防は内部の材料や構造が不明である。また,堤体や基盤に比較的透水性の良い水みちや欠陥部などが存在すると,降雨や高水の繰り返し作用により,堤体土が徐々に吸い出され劣化が進行し,高水時の破堤に結びつく。これに対し,現存の堤防に関する主なデータは,およそ延長1km毎のボーリング調査である。堤体の不均一性が極めて高く,状態が経時的に変化し,さらに堤体のごく局所的な欠陥が破堤に繋がる被災の特徴からして,この調査頻度で危険箇所を抽出するのは現状では不可能といって良い。一方,近年ではUAVからの測定や衛星技術等の急速な発展により,高密度・高精度のリアルタイム地表面形状情報を堤防全体について取得することが現実味を増しており,これを用いた堤防評価技術の研究開発は是非ともチャレンジすべき課題である。 このような背景のもと,本研究では地表面形状情報を基にした新たなアプローチによる堤体の健全度評価及び高水中のリアルタイムでの損傷進行度評価法の構築を行った。まず始めに,(1)高水の浸透により生じる堤体形状の微小だが特徴的な変形パターンを精緻な実験により明らかにした。そこでは,外力パターンを変化させ,堤体表面形状の高精度3次元測定を行い,特徴的な表面形状変化パターンを堤体の変状メカニズム毎に特定した。続いて,(2)近年の高水で変状が発生した堤防の現場において,堤体表面形状を詳細に測定し,(1)のモデルで堤体の内部状況を推定し,現場で行われた詳細な調査結果と比較することによりモデルの推定精度を確認した。さらに,(3)UAVにより取得した堤体表面形状に関する膨大な点群データを用い,その中から特徴的なパターンを効率的に抽出する技術を検討した。
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