研究課題/領域番号 |
17K18909
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
畠 俊郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (30435424)
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研究分担者 |
千葉 元 大島商船高等専門学校, 商船学科, 教授 (20369961)
八木 光晴 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (90605734)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 地盤工学 / 深海環境 / 海底資源 |
研究実績の概要 |
陸域や浅海域で広く用いられているセメント改良土や,環境負荷の面などから新たな地盤改良技術として着目されている微生物固化処理土の深海域への適用性評価を目的とした検討を進めている. 室内試験の結果から,尿素の加水分解酵素であるウレアーゼを算出する能力を持つ微生物と,炭酸カルシウムの析出促進を目的とした炭酸イオン供給源としての尿素をセメント改良土に混ぜ込むことにより劣化を抑制し,長期安定性が期待できることが明らかとなった.この効果を浅海および深海での暴露試験を通じて明らかにすることとした.暴露試験に用いる供試体は,日本近海の浅層および深層で採取した底泥から単離し,炭酸カルシウムの結晶促進による劣化抑制効果が期待できる微生物を用いて作成した. この供試体の実環境での有効性検証を目的とし,山陰沖の日本海とオホーツク海において暴露カラムの係留を行った.設置までは順調に行えたが,日本海については係留系の切り離し装置のトラブルにより2年連続で回収ができなかった.また,オホーツク海については2020年末に回収することができたが,学外装置を利用しての分析が,コロナ禍による移動制限により実施できなかったため次年度にあわせて実施することとした. そのため,新たな取り組みとして主に浅海域で堆積している表層堆積物中に現在社会的関心が高まっているマイクロ(もしくはナノ)プラスチックがどの程度混在しているか?混在しているとした場合にどのような形状をしているのか?を安全かつ簡易に測定できる「MP染色法」の有効性について検討した.近場で採取した堆積物中から薬の保護フィルムや衣類由来と考えられる繊維状のMPを地盤工学分野で一般的な加温装置を用いた染色により識別できることを明らかにするとともに,ナノスケールのMPについても顕微鏡下での色味確認により識別できることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度の航海においてオホーツク海に設置したサンプルは関係機関の協力により回収することができたが,日本海に設置した暴露カラムの回収がコロナ禍に代表される社会情勢の変化に伴う航海期間の制約などもあり日数が限定され回収に至らなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は5月と10月の計2回,日本海の深海域に設置したサンプルを回収する航海を計画している.あわせて,2020年度の秋に回収したオホーツク海の深海域に採取したサンプルの分析や浅海域で採取した底泥中に含まれているナノスケールMPの解析などを進め,提案手法によるセメント改良土の浅海・深海域での劣化抑制および長期安定性評価を進めるとともに,新たな地盤工学的課題とされるナノスケールマイクロプラスチックの底泥からの検出・底生生物への移行抑制効果などについて明らかにしていけるよう計画を進めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定していた暴露試験体の回収が計画通りに実施できなかったことに加え,コロナ禍の移動制限により学外施設を利用しての分析が困難となったため. 2021年度は年2回の短期間航海を計画しており再度暴露試験体の回収に挑戦する.また,航海が実施不可能になった場合を想定してマイクロ(もしくはナノ)プラスチックを対象とした新しい検出法についてIITボンベイなど海外の研究機関と連携しながら検討を進めていく計画としている.
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