研究課題/領域番号 |
17K18913
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
五十嵐 豪 東北大学, 工学研究科, 助教 (10733107)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | ジオポリマー / アルカリ活性スラグ / 混和剤 / 凝結促進剤 / 高炉スラグ微粉末 |
研究実績の概要 |
コンクリート工学(建築・建設材料学)分野においては,東京電力福島第一原子力発電所の事故により発生した大量の放射性廃棄物の安全な処理・処分技術を開発すること,温室効果ガス排出削減による気候変動問題に対応することを目的として,アルミナシリカ粉末とアルカリシリカ溶液との縮重合反応によって形成される固化体であるジオポリマーの実用化が積極的に進められている。ジオポリマーの最大の特長は,製造時の二酸化炭素排出量が少ないことや各種産業副産物が有効利用できることから,気候変動問題に対応できる点である。加えて,セメント・コンクリートの劣化原因となるアルカリシリカ反応,強酸,高温に対する抵抗性にも優れていることから,長期的な安定性が求められる用途,特に,放射性廃棄物の固化処分に利用することが検討されている。しかし,ジオポリマーの材料となるアルミナシリカ粉末やアルカリ溶液にはさまざまな選択肢があり,それらの材料の組合せによって性状が変化することから,ジオポリマーを実用化・高性能化するには,研究分野の成熟度としては萌芽期の段階といえる。これらの背景から,ジオポリマーを用いた放射性廃棄物の固化処理・処分技術の確立のための萌芽的研究として,特に,高炉スラグ微粉末を主な活性フィラーとしたときに触媒効果を期待した微量の金属酸化物を添加したジオポリマーの反応メカニズムおよび性能発現メカニズムの解明に取り組み,固化処理に適した高性能ジオポリマーの開発に取り組んだ。 今年度は,酸化亜鉛を混和剤として用いたセメントペーストについての性状と,これに高炉スラグ微粉末,凝結促進剤を併用した場合の影響評価を目的とした検討を行った。その結果として,酸化亜鉛の添加により圧縮強度が増進すること,特にセメントの 30%を高炉スラグに置換した調合の場合では,圧縮強度のより大きな増進が見られる事を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,新材料開発プロセスとして,主に出発材料の調(配)合比を変えて,反応生成物および機械的性質の実験的取得を行ったが,酸化亜鉛の添加により圧縮強度が増進すること,特にセメントの30%を高炉スラグに置換した場合で,圧縮強度のより大きな増進が見られる事を確認したため,順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,新材料評価プロセスとして,前年度までに得られた出発材料の調(配)合比のジオポリマーを中心として,性能評価に関する実験を行う。具体的には,固化体としたときに乾燥・湿潤といった環境変化に伴う収縮ひび割れが生じることにより内部へジオポリマーを侵食しうるイオンを含む水が侵入すること,内部にそのような水が侵入したときにジオポリマーおよび放射性元素が溶出することへの耐性である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた粉末試料の圧縮成型体の作製および収縮特性の取得の実施を次年度に実施する予定である。
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