コンクリート工学(建築・建設材料学)分野においては,東京電力福島第一原子力発電所の事故により発生した大量の放射性廃棄物の安全な処理・処分技術を開発すること,温室効果ガス排出削減による気候変動問題に対応することを目的として,アルミナシリカ粉末とアルカリシリカ溶液との縮重合反応によって形成される固化体であるジオポリマーの実用化が積極的に進められている。 本研究では,ジオポリマーを用いた放射性廃棄物の固化処理・処分技術の確立のための萌芽的研究として,特に,高炉スラグ微粉末を主な活性フィラーとしたときに触媒効果を期待した微量の金属酸化物を添加したジオポリマーの反応メカニズムおよび性能発現メカニズムの解明に取り組み,固化処理に適した高性能ジオポリマーの開発を目的とした。 今年度は,高炉スラグ微粉末を活性フィラーとしたジオポリマーの各種性状に,酸化亜鉛の添加率の変化が及ぼす影響について検討を行った。その結果,5.0 mass%の範囲内では,酸化亜鉛の添加率が増えるほど,フレッシュ性状としては,フロー値が大きくなり,終結時間が長くなること,硬化体性状としては,自己ひずみが小さくなることが明らかになった。一方で,酸化亜鉛を添加すると,その添加率によらず圧縮強度およびヤング率は小さくなること,中性化抵抗性が低下することが明らかになった。また,酸化亜鉛の添加は,始発時間,質量含水率,総空隙量,塩分浸透抵抗性に対しては,明確な影響が生じないことが明らかになった。
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