研究課題/領域番号 |
17K18915
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西脇 智哉 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60400529)
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研究分担者 |
湯淺 昇 日本大学, 生産工学部, 教授 (00230607)
五十嵐 豪 東北大学, 工学研究科, 助教 (10733107)
前田 匡樹 東北大学, 工学研究科, 教授 (30262413)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 低強度コンクリート / 非破壊検査 / 圧縮強度 / 発展途上国 / 繊維補強コンクリート |
研究実績の概要 |
本研究課題は2つの検討項目に大別される。[1] 低強度コンクリートのスクリーニングを目的とした非破壊検査(NDT)手法の体系化に関して、対象とする途上国をバングラデシュと想定して検討を行った。各種の試験体を作製するとともに、現地に赴いての実際の建築物に対する調査を実施した。これらを対象に各種のNDT手法を適用し、10MPa以下を目安とする低強度コンクリートのスクリーニングについて検討を行った。L型リバウンドハンマーを用いた検討では、模擬試験体の範囲では粗骨材などの使用材料と調合の違いによらず、低強度領域を含めて一定の反発速度比と圧縮強度の関係が得られた。一方で低強度レンガチップ骨材を用いた場合には異なる関係を示した。また,既存建築物への適用に当たっては、比較的粗い表面であっても適用可能であった。引っかき試験に関して、模擬試験体の範囲では使用材料によらず引っかき傷幅と圧縮強度に一定の関係が得られた。この一方で,測定結果が表面の平滑さに強く影響されるため、バングラデシュでの適用結果では極めて大きいばらつきが生じた。ただし、これは適切に傷幅を読み取れないことが原因であることが多いと考えられ、計測機器の開発も含めて、今後の検討が必要と考えられる。また、エコーチップに関して、ここでの検討範囲では表面硬度と圧縮強度には相関関係が見られたが、表面の平滑さに大きく影響を受けるため、特に現地調査で使用した際には、ばらつきが大きい結果となった。 [2] 簡易な補強材の開発については、特に非構造部材として扱われることの多いRCフレーム中のレンガ壁を対象として、繊維補強モルタルおよびラスなどを併用したモルタルによる補強方法を検討した。要素実験の結果からは、補強効果が得られることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の本研究課題2件のそれぞれについて、[1] 発展途上国を対象とした低強度コンクリートのスクリーニングでは、国内における模擬試験体と、バングラデシュ現地に赴いての実際の建築物に対する調査を実施できたことで、おおむね予定していた通りの成果を得たものと考えている。NDT手法については、上述のL型リバウンドハンマー、ひっかき試験、エコーチップの他にも、N型・P型リバウンドハンマー、ウィンザーピン貫入試験などについても検討を行っており、特にバングラデシュ現地で実際に適用した結果を整理してそれぞれの長短を整理するなど、実際の作業に即した形でのデータを整備しつつある。各種の模擬試験体についても、現地材料の直接的な輸入こそ困難であったが、これを模擬した低強度レンガをチップ化して粗骨材に用いるなど現地を想定したものを作製することができており、十分なデータが得られつつあると認識している。現地調査については、想定していた10MPa以下のコンクリートを対象とすることができなかったため、これは今後の調査対象の拡充を予定している。現状では、L型リバウンドハンマーと引っかき試験を主軸として、平成30年度はドリル削孔もしくは小径コアなども検査手法の一つとして取り入れる予定で、更なるデータの拡充を図るが、カウンターパートとなるバングラデシュ側研究者から留学生を受け入れるとともに、研究実施に関して良好な関係を築くことができており、継続的な検討の確約を得ている。[2] 簡易な補強材の開発については、ジュートや麻・藁などの植物繊維に関する検討は行えなかったものの、RCフレーム中のレンガ壁を対象とした要素実験結果を得るとともに、平成30年度には部材実験も予定されている。これらの状況を総合的に判断して、おおむね予定通りに進展していると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、平成29年度に引き続いての検討がベースとなるが、[1] については現地調査の範囲を広げてブータン・ネパールなども対象に加えることを計画している。現地での調査には、また、対象建築物について、想定する10MPa以下の低強度コンクリートが強く疑われる建築物を対象に加えられるよう、カウンターパートとも調整を重ねる。ここで得られる結果をフィードバックすることにより、対象地域における実効的な指標として整理する。[2]のレンガ壁補強モルタルの検討に関しては、ジュートや麻・藁などの植物繊維を補強繊維としたモルタル(FRCC)に関する検討を進める。これらを用いた要素実験に加えて、構造性能の評価に繋げるため、RCフレーム中に設置されたレンガ壁についても適用しての実験を計画している。この場合には、部分的に左官材のように塗布することや、ラスを併用する手法(Ferro-Cement)、パネル化して部材に取り付けるような適用方法についてもできる限り検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は効率的な予算執行を心掛け、また、平成30年度に当初予算には組み込んでいなかった国際会議での成果発表を行うことにしたため、必要な消耗品などをやや割愛するなどして予定金額よりもやや抑えた執行とした。平成30年度には、上述の国際会議における成果発表のほか、継続的な実験および現地調査を予定しており、繰り越し分を合算しての予算の執行が必要となる。
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