研究課題/領域番号 |
17K18916
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小林 光 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90709734)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 採光装置 / 非結像光学 / 自然採光 / 省エネルギー |
研究実績の概要 |
第2年度は、1.初年度の成果の発展と改善、2.実大採光実験による性能確認を実施した。 1.初年度の成果の発展と改善 初年度に開発した採光レンズは、外形が極めてシンプルであり、実適用を意図した場合には設置やメンテナンスに於いて優れると共に、製作も容易と考えられるものの、以下の2つの課題がある。課題1:入射面の内ほぼ半分のエリアの光を所望の位置に取入れることに成功したものの、入射面の残りのエリアの利用率を高めることが望まれる。課題2:配光特性において、太陽光の高度が低い際に室奥へ、高度が高い際に窓よりの天井に配光する傾向があり、高高度時により室奥に配光することが望ましい。これに対し、第2年度は、A)初年度の採光レンズを基本として入射端の光制御を検討するアプローチAと、B)全く異なる手法による入射光と放光制御のアプローチBを検討した。アプローチAは、初年度開発の採光レンズの入射端の調整により配光特性の調整と採光率の向上を同時に実現することを意図したが、十分な成果に至っておらず、継続して検討を行っている。アプローチBは、コーラーインテクレータと称される光のブレンド技術を基本として改良を加えることで採光率及び配光特性を改善することに成功した。性能はまだ十分ではないものの、前述の課題①②をある程度満足することが出来た。これらの形状検討は3Dモデリングソフトを用いて実施し、性能はシミュレーションにて確認した。 2.実大採光実験の実施 初年度の採光レンズ形状及び、前述の採光レンズ形状をレーザーカッターにて多数カットして積層し、幅約950mm、高さ300mmの採光装置を製作した。実際の室内への採光を確認すると共に、縮尺模型を用いた実験行った。以上の結果から、窓正面の高度60~70°の直射光(晴天)に対して室奥8m付近で1000lx以上の照度が期待される結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請に於いて、本研究を以下の3ステップ(STEP1:採光レンズの原理に関する研究開発、STEP2:試作検討、STEP3:実空間を対象とした実験)で計画し、第2、3年度はSTEP 2,3の実施を計画している。 第2年度の今期は、初年度から継続してSTEP1に該当する採光レンズの形状検討を進め、STEP2に当たる試作検討及び模型実験等を実施した。その結果、初年度成果に対して採光性能の改善を実現した。更に最終年度に向けた改善の方向性(目論見)も得ることが出来た。以上により、採光レンズ形状検討はおおむね順調に進展していると考えている。 STEP3では、当初計画ではアクリルの押し出しやキャストによる採光レンズの製作と実験を計画したが、実験装置の請負業者が見つからないため、全てレーザーカッターでカット、積層することで内作する形での試験体製作を行った。押し出しなどによる製品に比べて性能は劣ると考えられるものの、今期は実大実験も実施し、一定の性能の確認は可能であること及び実大実験の知見を得ることが出来た。 最終年度の検討と実験に向けて、試験体の製作方法の検討は継続して必要ではあるが、今期の結果から内作による試験体とシミュレーションを併用しながら、実用上有効な採光効果の確認が可能であると考えており、このことが決定的な問題にはならないと判断している。よって、実験を含めて、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、初年度及び2年度に構成した2種の採光レンズの性能向上の検討を継続すると共に、実験とシミュレーションにより性能検証を行う。初年度に構成した採光レンズは、採光及び方向性能を改善する為の方法(方法の目論見については現状非公開)に沿って、採光レンズの形状検討を継続する。また、2年度に構成したレンズについては、各部の曲面の接続の粗さ等に改善の余地があることから、調整を中心に検討を行う。当初目論んだ高精度な実験をシミュレーションで代替すること以外は当初計画を大きく変更するものではない。 また、当初計画にはないものの、上記の2次元の採光レンズ形状を3次元形状に発展させ、太陽高度のみではなく、太陽方位の変化への対応についても検討を本課題に加えて実施進事を予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、採光レンズの性能試験を実大実験で行うことを前提として、試験体製作を樹脂加工会社に外注する予定であった。これに対し、試験体製作を請負可能な製造者を探したものの、適切な会社が見つからなかったことから、第2年度中盤に、レーザーカッターを用いた内作の試験体による実大実験と、光シミュレーションによる解析でこれを代替する方針に変更した。本シミュレーションを実施する為に年度終盤にハイパフォーマンスコンピュータを導入することとしたが、想定したCPU(intel Core i9)の入荷が遅れたため、年度内の導入に間に合わなくなった。その結果次年度使用額が発生する事となった。
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