2018年度は、間伐材のような筒状かつ不規則な凹凸のある材料を把持するための機構を設計し制作した。この把持機構では、直径が200mmまで、長さが1000mm程度の試験体を固定することができ、かつ、材料を間伐材の成長方向を軸として360°回転できるようにした。この機構により、ロボット加工機が常に無理のない姿勢で材料を切断できるようになった。これと、前年度の成果である材料の三次元計測および合理的な選択システムと組み合わせて、ロボット加工により付加価値の高い間伐材の加工に関して実行した。 実験では、間伐材の付加価値を高めることを目的に、従来の手法では加工困難な形状の切削を以下の数例実行した。(1)間伐材からの正多角形断面(五角形、七角形)の部材の切出し、(2)丸ノコのみで加工可能な直行部材の仕口の切削、(3)ピースエンピース構法を構成する部材の切出し、いずれも、井桜組の壁を念頭にしたものである。 以上の実験には、上下部材間等の実加工や乾燥割れ防止の背割りも施し、実用的に必要なディテールの全てを実装した上で、加工可能であることを証明した。 本研究により、間伐材のような小径でばらつきの多い材料から高付加価値な建築部材を製造できることが証明された。実験では間伐材は長さを1000mm程度に切断してから用いたが、3000mm~4000mmの長さのままで把持できる装置を用意すれば、実大のログハウスを間伐材で建築することが可能である。切り捨て部分の極小化による効率の良い素材活用となっている点も、資源循環の観点から好ましい結果を導くことができた。
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