研究実績の概要 |
日本の自治体連携(IMC)は、効率的な公共サービスの提供を促進する可能性がある。これについて3つの研究を実施した。 (1)公衆衛生と消防サービスに焦点をあて、2012から2017年の5年間で1,706の日本の自治体についてパネルデータ分析を行った。その結果、IMCの支出比率を上げると、調査対象の両方のサービスで公共支出が減少すること、IMCの限界効果は自治体の人口の大きさによって異なることがわかった。 (2)人口あたりのサービス提供コストを最小限に抑え、規模の経済と取引コストの両方のバランスをとった効率的な人口規模を分析した。その結果、規模の経済が消防分野で存在することが示され、かつ、費用関数は非線形となった。また、自治体連携は、取引コストと規模の経済の増大により、費用構造を変化させることが判明した。 (3)自治体が自治体連携(IMC)に参加する場合のコスト構造の違いを分析し、1人あたりのサービス提供コストを最小化する最小限の効率的なスケールを求めた。分析の単位は、廃棄物処理サービスの提供地域である。地域の環境変数を考慮したCobb-Douglas型の費用関数を仮定し、現在の人口と公共サービス提供エリアの最小限の効率的なスケールとの間の違いを示した。重要な結論は以下のとおりである。第一に、IMCに加わると、サービス提供の品質の監視費用がかかるが、費用は母集団が大きいほど人口当たりの費用は低減する。第二に、費用関数は人口に対して線形ではなく、下に凸の関数となった。第三に、日本の公共サービス提供分野において9割ほどは、規模の経済を利用する機会がある。 地理的な制約により、IMCの枠組みによる廃棄物処理の実施が困難な場合もあるが、この研究のモデルは、自治体がIMCの枠組みに参加することで公共支出を効率的に削減できる潜在的な可能性を示唆している。
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