研究課題/領域番号 |
17K18921
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
市之瀬 敏勝 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10151474)
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研究分担者 |
佐藤 篤司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00362319)
楠原 文雄 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50361522)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 鉄骨 / 無筋コンクリート / 鉄筋コンクリート / 柱脚 / 基礎梁 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,鉄骨コンクリート基礎梁同士の接合についての実験を行った。通常,鉄骨梁の接合は高力ボルトなどを用いて行われるが,基礎梁では下側のボルトを締付けることができない。現場溶接も同様に困難である。さらに,上側のボルトは仕上げ材と干渉しやすい。今回は,工場で鉄骨梁にプレートを溶接し,ループ筋あるいは鉄骨プレートと斜め筋を併用する工法を考案し,高力ボルトや現場溶接を不要としたものである。これにより,施工の簡素化が期待できる。実際,試験体を制作した感触として,施工の容易さが実感できた。実験は,二段階で行った。第一段階では,接合部の純粋な曲げ強度を知るため,4点曲げ加力により,一様な曲げモーメントを加えた。第二段階では,接合部のせん断強度を知るため,地震時の荷重を想定して,逆対称の曲げモーメントとせん断力を加えた。いずれも,コンクリート,鉄骨,鉄筋は普通強度のものを用いた。これも,施工の容易さを考えてのことである。実験結果はおおむね良好であった。ただし,鉄骨プレートを用いた曲げ実験では,ひび割れが一か所に集中する傾向があり,曲げひび割れの分散という点ではループ筋が優れるという結果となった。せん断強度に関する実験は,ループ筋・鉄骨プレートの試験体とも,非常に高い強度(必要強度の2倍以上)が得られた。この理由は現在のところ不明であり,うれしい誤算ではあるが,研究論文として発表するためには,今後の解析的な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は,平成29年度に柱脚の実験を行い,梁同士の接合については平成30年度を予定していた。しかし,柱脚の実験に関する検討を始めたところ,実験装置の設計など,種々の困難が明らかになった。そこで,今回は順序を逆にし,平成29年度に梁同士の接合についての実験を実施した。しかし,全体の進捗状況という点では全く問題がない。また,平成30年度の実験についても現在までに検討が進んでおり,順調に実施できる目途が立っている。
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今後の研究の推進方策 |
鉄筋を使用しないで,コンクリートだけで柱脚の固定度を高めることを目指した実験を行う。このようなSC 基礎梁(鉄骨+無筋コンクリート)を用いれば,基礎,上部構造ともに工場で製作(プレハブ化)できるようになり,基礎も含めた建物全体の寸法精度を統一できるようになる。また,鉄筋をほとんど使用しないため工期の短縮と工費の削減が実現できる。柱脚の固定度も簡単に確保できる。つまり,SC 基礎梁には設計,施工,コストいずれも大きなメリットがある。鉄骨建物では柱脚が降伏し基礎梁は降伏しないケースがほとんどと考えられるので,基礎梁は無筋コンクリートでも十分である。今回の研究は,世界の鉄骨造(特に基礎工事の割合が大きい低層建物)の基礎梁形式を一変させる可能性を秘めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,平成29年度に柱脚の実験を行い,梁同士の接合については平成30年度を予定していた。しかし,柱脚の実験に関する検討を始めたところ,実験装置の設計など,種々の困難が明らかになった。そこで,今回は順序を逆にし,平成29年度に梁同士の接合についての実験を実施した。その結果,平成29年度は予定よりも少なめの経費で研究が可能になった。平成30年度は残額をすべて使用する予定である。
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