研究課題/領域番号 |
17K18922
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹脇 出 京都大学, 工学研究科, 教授 (20155055)
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研究分担者 |
藤田 皓平 京都大学, 工学研究科, 助教 (40648713)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 耐震設計 / 断層近傍地震動 / 長周期地震動 / ダブルインパルス / 極限地震動 / 非線形ダンパー |
研究実績の概要 |
断層近傍地震動を模擬したダブルインパルス(DI)を受ける免震建物と地盤との動的相互作用を考慮した1自由度系モデルについて、極限応答(応答を極大化する最悪DI時間間隔の決定)の閉形表現を誘導した。元モデルに何段階かの縮約手法を適用し、1自由度系弾塑性モデルを構成する方法を展開した。種々の地盤について提案極限外乱法を適用し、地盤特性による極限応答の変化を明らかにした。入力の加速度振幅を一定にした場合では、地盤特性による応答への影響はある程度存在するが、速度振幅を一定にした場合では、地盤による影響はほとんどないことを明らかにした。 長周期長時間地震動を模擬したマルチインパルス(MI)を受ける線形粘弾性ダンパーを有するバイリニアー1自由度系モデルについて、極限応答の閉形表現を誘導した。MIの入力レベルに依存して、解の分類が必要となる。 長周期長時間地震動を模擬したMIを受ける非線形粘弾性ダンパーを有する完全弾塑性1自由度系モデルについて、極限応答の閉形表現を誘導した。閉形表現の導出により、非線形ダンパーと構造物の応答領域に依存して、数種類の解の分類が必要となることを明らかにした。 断層近傍地震動を模擬したDIを受ける完全弾塑性型復元力特性を有する多自由度モデルに対する極限外乱法を展開し、極限タイミングは1層の層せん断力(復元力と減衰力の和)が0となる時であることを明らかにした。DIの振幅を漸増させて極限応答のレベルとの関係を調べるダブルインパルスプッシュオーバー(DIP)という概念を新たに定義し、それが多自由度モデルへの粘性ダンパーの最適配置問題において重要な役割を果たすことを明らかにした。弾塑性型モデルでは応答が複雑な応答特性を呈するため、ダンパーの有効な配置法を見出すには、2つの設計問題(特定層への集中配置と全層への分散配置)を組み合わせることが有効であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した内容のほとんどを着実に実行している。また、非線形粘弾性ダンパーを有する完全弾塑性1自由度系モデルについて、極限応答の閉形表現を誘導した点は当初計画にはなかったものであり、当初計画以上の成果を得ている。 本研究では、2017年に、断層近傍地震動と長周期長時間地震動に関する研究成果を5編の国際誌論文として掲載し、2018年においても既に3編の国際誌論文として発表している。ただし、これらはすべて1自由度モデルに対する研究成果である。現在、インパルスを用いた提案手法を多自由度系に拡張しており、それに関する研究成果も得つつある。2019年度に研究期間を延長し、それらの成果を論文にまとめて発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度には、1自由度モデルに加えて2自由度および多自由度モデルに対する極限外乱法の定式化を行ってきたが、今後は多自由度モデルに対する極限外乱法をさらに深化させて展開する予定である。特に、ダブルインパルスプッシュオーバー(DIP)という概念は、入力地震動や建物さらには地盤特性に関する種々の不確定性を同時に考慮する上で極めて有効と思われるため、その概念をさらに多くの入力地震動タイプや建物種別にも拡張できるように準備したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ダブルインパルスを受ける多自由度モデルに対する極限外乱法を展開する必要性が生じたため、次年度に継続して研究を実施する計画とした。使用計画としては、多自由度モデルに対する極限外乱法に関する研究のための資料収集等のための旅費と研究成果の発表のための経費とする。
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