昨年度までに光の非視覚的な影響(メラトニン抑制や瞳孔の対光反射)及び水晶体透過率の実測値による年齢間比較を行った。今年度は主に視覚的な影響(明るさ感、快適感など)の年齢差について検討を行った。実験は既に2019年度に実施しており、そのデータの解析を実施した。実験は、通常色覚特性を有する健康な小学生の子ども14名(9.6±1.8歳)、大人14名(41.2±2.5歳)、高齢者13名(68.0±1.9歳)を対象とした。照明は相関色温度を6700 K一定とし、照度を10 lx、100 lx、1000 lxの3条件とした。それぞれの照明環境下で学習を行うと想定した場合の主観的な「明暗感」「好み」「快適感」の評価をVAS法によって行った。その結果、100 lxまたは10 lxの低照度になるほど世代間の明暗感の差が大きくなり、子どもは大人や高齢者に比べて明るいと感じていた。また、低照度であっても子どもは大人や高齢者に比べて、好みや快適感を損なうことなく黒を見やすいと感じていた。上記の結果より、子どもは低めの室内照度でもある程度の主観的な視認性を維持できていることが明らかになった。このことより、子どもの夜の照明環境について、照度をある程度低くしても主観的視認性に影響を与えることなく、夜の光による概日リズムへの影響を軽減できる可能性が示された。一方で、本研究では子どもを対象にした実験であったことから、主観的な評価に何らかのバイアスが含まれる可能性もある。これらの成果については論文投稿中である。また、今年度は、これまで行ってきた水晶体透過率と非視覚的な作用の年齢差に関する二つの研究成果を学術雑誌に掲載することができた。
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