研究課題/領域番号 |
17K18931
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
松山 賢 東京理科大学, 国際火災科学研究科, 教授 (10307704)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 火災 / 煙制御 / 煙粒子 / 帯電量 |
研究実績の概要 |
火災時に発生する煙を電場により制御するためには、まず火災時に発生する煙の特性を把握する必要があるが、複雑な化学反応を再現することは困難であることから、H29年度はマクロ的な視点から火災時に発生する煙粒子の大きさや粒度分布および帯電量に影響を与える因子に着目し、燃焼により発生する煙粒子の特性(粒径分布、荷電分布、粒子重量等)の把握を目的とした実験を行った。 実験の前提として、煙粒子を測定するには安定した煙の発生が最も重要となるため、煙を定常的に加熱する装置(煙発生装置)の製作を行った。煙発生装置は、固定した加熱部(電気ヒーター)と可燃物設置部から構成され、加熱時には可燃物の重量減少を測定するための重量計を設置できるような構造とした。一方で、集煙側はアクリル製の(側面側を取り外し可能な)蓄煙箱を煙発生装置の上部に設置することで、煙発生装置から発生した煙は、上昇気流により蓄煙箱内に誘導され、光学的煙濃度(煙発生量)ならびに煙粒子の情報を取得するためのサンプリングが可能となった。 構築した煙発生装置および集煙装置を用い、種々の可燃物特性や加熱条件に対し、排ガス測定等に利用される高温雰囲気環境下でのサンプリングが可能なDEKATI社のHT ELPI+を使用することで、煙粒子に関し、粒径分布、荷電分布、粒子個数の計測を行った。今回の実験では、具体的に9種類の可燃材料と種々の加熱条件を対象とした。この結果、可燃物が同じであっても加熱条件が異なることで、煙の粒径・個数や荷電量が異なることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の研究計画書に記載した内容通りに実験およびその解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、排煙効率や煙を侵入させたくない室の遮煙性能の向上等、実大規模の煙制御に向け、縮小模型による電場による煙粒子の挙動を測定する目的で、電場による荷電粒子の挙動把握実験を行う。本実験では、平板電極間を様々な条件で設置および制御し、煙粒子の挙動を把握する。試行錯誤的に実験条件を変え、煙粒子を電場により制御し、誘導(煙の流れ方向を変える)、停滞(煙の拡散の抑制)、分離(煙粒子と空気を分離)を再現することを目的とする。なお、煙粒子の荷電条件は、H29年度の実験で得られた情報をベースとする。 また、実験では、荷電粒子の電場の影響を把握するために、可燃物の燃焼による帯電粒子だけではなく、粒径および帯電量をコントロールできる特殊ポリマーをヒートガンにより発生させた熱気流内に浮遊させ模擬煙粒子も利用する。実験模型は、アクリル板により煙粒子の誘導・停滞の確認可能な箱と、分離確認用の箱を連結し、両者の間に開口部を設けた箱とする。アクリル箱内に電場を設け、実燃焼による煙あるいは模擬煙粒子をアクリル箱内に入れ、その挙動の観察を行う。この実験では、煙粒子に関して、煙濃度、粒径分布、荷電分布、粒子重量、移動速度を、電場に関して、印加電圧・電流を測定する。なお、移動速度に関しては、煙粒子の挙動は煙粒子をトレーサーとして、PIVシステム(粒子イメージ流速計測法)による測定を行う予定である。これにより、帯電量と煙粒子速度(移動速度)を知ることが可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
0以上であるが、ほぼ計画通りの使用状況である。44円については、H30年度に実験消耗品に充てる。
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