研究課題/領域番号 |
17K18939
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
淺井 雅人 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (00117988)
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研究分担者 |
高木 正平 首都大学東京, システムデザイン研究科, 特任教授 (10358658)
稲澤 歩 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (70404936)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 熱線風速計 / 高レイノルズ数 / 乱流計測 / 壁乱流 |
研究実績の概要 |
本研究は,粘性特性スケールが10ミクロン程度の高レイノルズ乱流に対して,微細渦スケール(粘性特性スケールの10倍程度)までの乱流変動を捉えることが出来るサブミクロンサイズの熱線センサを開発し,高レイノルズ数域の壁乱流構造に関する信頼できる実験データを得るに十分な,高周波数応答・高空間分解能の乱流速度変動計測技術の実証を行なうことを目的とした実験的研究である.初年度は,ナノテクノロジーによる高レイノルズ数乱流計測用のサブミクロン薄膜型熱線センサの開発と,熱線風速計センサで壁乱流の壁近くの組織変動構造を正確に捉えるための指針となる熱線センサのセンサ長(l)とセンサアスペクト比(センサ長/センサ径)が乱流変動測定に及ぼす影響に関する従来の結果の実験検証に取り組んだ. サブミクロン薄膜型熱線センサの開発については,高レイノルズ数乱流に対して,最小乱流渦構造まで十分信頼性を保って計測するためには,計測センサ長が壁単位スケールで10程度より小さくなることが要求されるが,30m/s程度の気流中の風洞実験を想定し,薄膜熱線センサの仕様を決め,試作準備を進めた. 壁乱流計測に対する熱線センサのセンサ長とセンサアスペクト比の影響に関しては約30年前のLigraniとBradshawの実験データがあるのみであり,ほとんどすべての熱線センサがその結果をもとに設計されている.しかしながら,彼らの結果の実験検証を行なったところ,これまでセンサアスペクト比が200以上にする必要があるといわれてきたが,その半分近くのアスペクト比でも乱流強度の計測値が約5%小さくなる程度であることが見出され,この点については再検証する必要性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高レイノルズ数乱流計測用のサブミクロン熱線センサの開発に関しては,厚み0.135μm,幅50μmの金薄膜センサの試作を行なった.サブミクロンセンサ製作の見通しが得られたので、現在強度確保のため材料を金から白金に変えた薄膜センサの試作を進めている. 壁乱流計測に対する熱線センサのセンサ長とセンサアスペクト比(センサ長/センサ径)の影響に関しては,壁近傍の速度変動を計測する場合,センサ長が壁単位で10程度以上では長さに比例して計測された変動実効値が減少することが示され,LigraniとBradshawの結果の通りであったが,センサアスペクト比(センサ長/センサ径)については,従来から推奨されてきた200以上という条件は慎重に検討する必要があるという結果が得られている. また,熱線流速計の周波数応答についても,高速流れで使用する場合に数キロヘルツ以上にセンサの雑音が現れてくることが見出され,その解決法を模索した.熱線特性を詳細に解析し,微細センサを使えば100kHz以上の変動まで計測できる目途が立った.
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今後の研究の推進方策 |
サブミクロン熱線センサの開発に関しては,薄膜型サブミクロン熱線センサの試作品を完成させ,予備試験を繰り返し,結果をフィードバックしながら熱線センサの改良を行う. また,サブミクロンセンサの製造法を応用し,レイノルズ応力測定用熱線センサの開発にも取り組むことも想定している.薄膜熱線センサにおいては十分製作が可能である. 壁乱流計測に対する熱線センサのセンサ長とセンサアスペクト比の影響に関する実験データの信頼性向上に努め,また,100kHz以上の乱流変動を高精度で計測できる熱線風速計システムの開発に繋げるための基礎データも取得する. それらの結果を踏まえ,高レイノルズ乱流場における乱流変動スペクトルなど統計データの熱線センサ長依存性などの調査を乱流場で行なう.壁乱流については,乱流レイノルズ数2000~6500の範囲で,微小熱線プローブと市販の熱線プローブの乱流スペクトルの計測能力の相違や乱流統計データの熱線センサの受感長やセンサアスペクト比(センサ長/センサ径)への依存性を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度ではまだ成果発表できるまでの結果を得るにいたらなかったため,成果発表旅費及び学会参加費が未使用となった.これらは,いずれも次年度に使用予定である また,センサ試作のための消耗品費の一部を次年度に繰り越した.研究の進捗は順調なので,平成30年度には実験研究の消耗品が十分必要であり,未使用額については30年度請求額とともに使用する予定である.
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