ハチの神経系に内在する制御機能を顕在化させるAttached device法を提案し,マルハナバチに適用した.空力的付加物であるAttached deviceを取り付け,ハチに安定飛行をするための制御機能の適応を強制することで,従来解析することが困難であったハチの飛行制御能力や学習能力が明らかとなる.まずハチの飛行履歴を正確に計測する実験装置を構築し,ハチに空力的付加物を取り付け飛行させる実験ノウハウを獲得した.多くの個体について実験を行うことで,強制的に変化させられたダイナミクスによらず,特定の制御目標を達成するように制御系を適応させていることが明らかとなった.特にハチの制御系の決定方針は人工物の制御系設計方針と整合したものであり,ハチの限られた神経系の資産でそれを達成していることは非常に興味深い.以上がAttached device法をマルハナバチに適用した結果である. Attached device 法による飛行試験では,マルハナバチのピッチング運動,沈下運動の翼に働く空気力への影響が重要なパラメータになっている.これらのパラメータについて航空工学の視点から2つの研究を行った.(1)これらの運動を行う際,慣性力や空気力によってパッシブに起こる翼運動による空気力が支配的であれば,マルハナバチに対して得られた結果はマルハナバチの神経に依存するものでなく体,翼の形状や剛性に依存していることになる.そこで,昆虫の運動とパッシブな翼運動との関係について理論解析を行った.(2)上記パラメータは翼に働く空気力で決まる値であるので,翼に働く空気力と強い相関を持つ翼付近での音圧測定の可能性を検討した.さらに,マルハナバチのAttached device 法による飛行試験では,飛行機での短周期モードの運動を観察していると考えている.そこで,無尾翼機の短周期モードの運動の観察に取り組んだ.
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