研究課題/領域番号 |
17K18946
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉瀬 章子 筑波大学, システム情報系, 教授 (50234472)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 錐最適化 / 半正定値錐 / 半正定値基 / 半正定値緩和 / 二重非負値緩和 |
研究実績の概要 |
「数理最適化」は,生産システムやサービス事業の効率化や,さらに最近では人工知能を支える要素技術として,1940年代に誕生して以来,社会に役立つ数理モデル・計算技術として注目を集めている.本研究の目的は,この数理最適化分野で近年特に盛んに研究されている錐最適化の,とりわけ解くことが困難と言われている問題群に対して,研究代表者らが発案した「半正定値基」を用いて,全く新たな発想に基づく解法を提案することである. 人工知能が搭載されたシステムは,自律的でありながら目的に沿った行動を実現するため,所与の制約の範囲内では任意の判断・行動を許す設計が行われている.この「制約の範囲内であるか」を判断する問題は制約充足問題と呼ばれ,数理最適化問題の典型的な問題の1つである0-1整数計画問題に帰着されることが知られている.0-1整数計画問題は,厳密解の求解が困難な「NP困難」と呼ばれる問題群に属しているため,様々な発見的解法や緩和解法が提案されている.本研究では近年注目を集めている「錐最適化緩和」に画期的な手法を提案する. 今年度は,研究代表者らが発案した「半正定値基」に1スカラー変数を加えることで新たな基に拡張できることが分かり,このことにより,計算効率の点で好ましい行列の非ゼロ要素数が少ない,疎な半正定値基が得られることがわかった.この「拡張した半正定値基」を用いて計算機実験を行ったところ,計算時間の短縮と緩和精度の向上の2点について有効性を確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者らが発案した「半正定値基」に1スカラー変数を加えることで新たな基に拡張できることが分かったことは,当初予想していなかった大きな発見であり,このことにより,計算効率の点で好ましい行列の非ゼロ要素数が少ない,疎な半正定値基が得られること,さらにこの「拡張した半正定値基」を用いて計算機実験を行ったところ,計算時間の短縮と緩和精度の向上の2点について有効性を確認することができたことは,当初の計画以上に進展ができたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
「半正定値基」を用いると,0-1整数計画問題に対して「半正定値基による二重非負値錐近似」というこれまでにない斬新な手法が提案できるが,今回「拡張した半正定値基」を提案できたことにより,さらなる研究の発展性が期待できる.研究代表者と研究室の学生による研究グループで,各問題に対して以下の作業を行う予定である.(A)理論的考察(拡張した半正定値基のさらなる性質の追求,各問題に対する緩和モデルとその解法,変数の数,1反復当たりの計算量等の要素について理論的に解析しアルゴリズムを構築)(B)計算機実験(アルゴリズムの実装後,乱数生成させた問題群に実行し,結果を考察・改良)(C)論文執筆(以上で得られた結果をまとめ,最適化関係の主たる国際学術誌に投稿)
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次年度使用額が生じた理由 |
研究概要で述べたように、今年度は「半正定値基の拡張」という新たな知見を得,さらなる理論的研究の必要性が生じたことから,これらの研究に注力した結果,経費が必要となる計算機実験や海外での発表が相対的に少なくなり,次年度使用額が発生した.しかし理論的研究の目途もつき,投稿論文としてまとめ始めていることから,来年度は予算上の予定通り,計算実験や学会発表を活発に行えるものと考えている.
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