研究課題
「数理最適化」は,生産システムやサービス事業の効率化や,さらに最近では人工知能を支える要素技術として,1940年代に誕生して以来,社会に役立つ数理モデル・計算技術として注目を集めている.本研究の目的は,この数理最適化分野で近年特に盛んに研究されている錐最適化の,とりわけ解くことが困難と言われている問題群に対して,研究代表者らが発案した「半正定値基」を用いて,全く新たな発想に基づく解法を提案することである.人工知能が搭載されたシステムは,自律的でありながら目的に沿った行動を実現するため,所与の制約の範囲内では任意の判断・行動を許す設計が行われている.この「制約の範囲内であるか」を判断する問題は制約充足問題と呼ばれ,数理最適化問題の典型的な問題の1つである0-1整数計画問題に帰着されることが知られている.0-1整数計画問題は,厳密解の求解が困難な「NP困難」と呼ばれる問題群に属しているため,様々な発見的解法や緩和解法が提案されている.本研究では近年注目を集めている「錐最適化緩和」に画期的な手法を提案する.昨年度は,研究代表者らが発案した「半正定値基」に1スカラー変数を加えることで新たな基に拡張でき,計算効率の点で好ましい疎な半正定値基が得られることがわかった.今年度は,この「拡張した半正定値基」の理論的性質を導出すると共に,この基の利用による計算効率の向上に関する研究を行った。まず理論的には,「拡張した半正定値基」の凸包について,加えた1スカラー変数に関する和集合をとると,2次錐最適化で判定できることが知られている「スケーリングされた優対角行列全体の集合」となることが示され,「拡張した半正定値基」の凸包が,線形計画問題で判定可能な新たな行列集合を与えることがわかった.また計算機実験結果からは,最大安定集合問題の緩和問題に対する切除平面法への有効性が確認できた.
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
統計数理研究所共同研究リポート「最適化:モデリングとアルゴリズム」
巻: 428 ページ: 106-113
統計数理研究所共同研究リポート「最適化:モデリングとアルゴリズム」 5) 巻 428
巻: 428 ページ: 114-129
Discussion Paper Series, Department of Policy and Planning Sciences, University of Tsukuba
巻: 1368 ページ: 1-16
巻: 1359 ページ: 1-20