研究課題/領域番号 |
17K18948
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 知朗 東京大学, 地震研究所, 助教 (40323654)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 日本海溝 / 海底ケーブル / 受信強度 / 水中音波 / 制御震源 / 機動観測 |
研究実績の概要 |
本研究は、海底における地震・音圧記録および海中音圧記録を用いて、水中音波伝搬過程を調査する。これまで海底観測データとして、近年新たに構築された海底ケーブルネットワークデータ、並びに前世紀末から運用されている海底ケーブルデータの収集を行っている。これらのデータの中から、自然地震および海中震源制御震源由来の音波記録を抽出し、震源位置と受信位置に対する受信強度の関係を調査した。これにより、特に海溝陸側斜面における受信強度分布と、海底地形に強い相関があることが明らかになった。この結果は、米国地球物理学連合秋季大会において発表した。 一方、海底観測は、ケーブル式ネットワークの他、従前より機動型観測システムによるものが多数実施されている。このような機動型観測は、観測期間が限定されているが、観測対象領域や観測点配置は柔軟に設計できる利点がある。そこで、多数運用されている機動型海底地震計に対し、音圧計を付加した装置を試作した。さらに本研究と別途実施した制御震源を用いた構造探査実験の機会を利用して、当該実験期間中に試作機を海底に設置および回収し、制御震源に伴う震動および音波記録の同時取得に成功した。 海中音圧データは、核実験禁止条約機関国際監視システム水中音波観測網によるものを利用する。初年度は北西太平洋で実施された構造探査用海中制御震源の記録をもとに、音圧強度や走時、後続波の特徴などを整理し、国際測地学協会及び国際地震学・地球内部物理学協会合同学術総会で結果を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では平成29年度は海中音圧データの収集、海中音圧データ解析、海底地震・音圧データの収集を実施予定であった。これらのうち、海中音圧データ解析については、IAG-IASPEI合同大会のCTBTOセッションにおいて発表を行った。また、海底地震および音圧データに基づく解析結果をAGU秋季大会にて発表した。 一方、本科研とは別に、火山(姶良カルデラ)の構造解明のため、制御震源を利用した海陸統合構造探査に参加する機会を得た。この実験では、平成29年度に陸域で制御震源を発震、平成30年度に海域で制御震源を発震、両年度の発震期間中、海陸両域において地震計を稠密展開するものである。本実験は、制御震源ゆえ震源の素性が明瞭であることに加え、地震計を稠密配置することから、波動伝搬過程を見るためには理想的な観測である。このため、平成29年度は海底に配置した地震計の一つに音圧計を試験的に付加し、制御震源由来の記録を地震計と音圧計の両方で所得することを試み、両方のデータ取得に成功した。 以上のように、これまでの進捗を当初計画と比較すると、既存観測ネットワークによる海底地震・音圧記録については、当初データ取得のみを予定していたが、解析および学会発表までを一部実施することができた。また、当初予定していなかったが、別経費による機動観測を利用して、新たに海底地震・音圧記録同時取得の道筋をつけることができるようになった。一方で、海中音波記録のデータ取得、特に地震カタログに基づく記録取得作業については遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
海底地震・音圧記録については、引き続き従前の海底ネットワーク観測データを取得・蓄積して利用する。さらに機動的観測において海底地震・音圧記録の同時取得が可能となったことから、別途実施が計画されている構造探査を活用して、海底における制御震源由来の地震計および音圧計記録を同時取得する。海中音圧データ取得と解析については、これまで研究協力者とメールベースで連絡をとっていたが、今後はCTBTO主催あるいは関係者が参加する会議等への参加を通じて、直接顔をあわせる機会を作り、円滑な研究推進を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度および次年度において、別経費による機動的観測による地震音圧同時観測をする機会が得られた。制御震源記録は、震源の素性が明らかであるため、本研究遂行の上で有用なデータをえることができるが、地震音圧同時観測を実施するためには、従前機器の改良が必要である。このため、当該年度で予定したデータ蓄積・解析用機器に購入を見合わせた。次年度は研究の進捗に応じて、当初積算の計算機、海底機動観測経費、海中音波の共同研究を実施するための旅費として使用する。
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