完全自動運転車両を用いた新たな交通サービスは,人々の交通行動だけでなくライフスタイルや街の構造までも変化させる可能性があり,未来の交通サービスに対する利用意向を把握することは将来の社会の様子を具体的に検討する上で重要である.しかし既往研究の多くは,自動運転技術に対する社会的受容性,既存のライドシェアサービスの利用意向,自動運転車をシェアした場合の交通量シミュレーション等を中心に分析しており,完全自動運転車を用いた交通サービスに対する人々の利用意向を詳しく掘り下げた研究は十分ではない. 本研究では,環境的・社会的特性に加え,個々の利用者の心理的特性が,完全自動運転ライドシェアシステムに対する利用意向・選好意識に及ぼす影響を精査し,それらの要因の影響度の大きさについて定量的な知見を得ることを目的とする.将来的な公共交通機関の技術的進歩によるサービス形態や自動車保有状況の変化に依存する新交通サービスの利用意向を,現時点で正確に把握するのは困難であることから,webによる選好意識調査を設計,実施し,完全自動運転ライドシェアシステムに対する関連情報を収集した.得られたパネル回答データに対し,個人の主観的要因や個人間の異質性を包括的に考慮可能であり,個人レベルでのパラメータ推定が可能なMixed Logit型の離散選択モデルを構築した.その推定結果を解釈したところ,同乗者の属性,個人の心理的要因等が完全自動運転ライドシェアシステム利用の支払い意思額や,旅行時間短縮価値にどのような影響を及ぼすのかを定量的に明らかにすることができた.
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