研究課題
本研究では日本域の降水予測精度の向上を目指した技術開発として、海上での可降水量(水蒸気の鉛直積算量)観測をリアルタイムで実施するために、船舶から安定的に可降水量の情報 を観測できるシステム開発と海上水蒸気量の予報に対するインパクトの検討を目的としている。平成30年度は、以下の2点について実施した。昨年度に構築した観測システムを船舶上のサーバで通年稼働させ、リアルタイムによるGNSS大気遅延量の算出を行った。可降水量の正確な計測にはGNSS大気遅延量の正確な推定が必須である。実験観測では、従来のPPP(単独精密測位)だけでなく、陸上の固定GNSS観測点から算出された補正値を用いるPPP-ARによる解析も同時に実施した。船舶の通信状況が悪いと解析に用いるデータが取得でないため、大気遅延量の算出成功率は通信状況に依存するが、大気遅延量の出力が得られた場合のみで判断するとおおむね良好な解析結果が得られた。海上水蒸気量の予報インパクトを評価するために、昨年度に検討したものよりもLETKFの局所化半径を拡大させた観測システムシミュレーション実験を行い、船舶搭載GPS観測の同化インパクトを再検証した。その結果、以前よりも海上水蒸気量の同化インパクトは明瞭になった。東西1列に船舶によるGPS観測が継続的に得られたと仮定した場合、32.5Nから34.5Nの間の緯度のうち33Nの水蒸気量が鬼怒川流域の降水量予測に最もインパクトが大きいことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定であるリアルタイム観測システムを用いた通年観測、観測システムシミュレーション実験がともに実施できたため。
観測ではおおむね良好なデータが得られたと考えられるが今後は定量的な精度検定を実施する。観測システムシミュレーション実験の結果については学術論文等で発表する。
船舶の寄港地が最寄り(代表者の勤務地)となった場合が多くデータ回収に行くための旅費が当初の見積りより少額であった。また今年度は観測とデータ収集が主だったため、当初購入を予定していた精度検定用の解析サーバは次年度以降に購入した方が効率的と判断し、残額をその費用に充てる計画である。
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Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II
巻: 97 ページ: 387~401
https://doi.org/10.2151/jmsj.2019-022