研究課題/領域番号 |
17K18968
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安藤 大輔 東北大学, 工学研究科, 助教 (50615820)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | マグネシウム / スカンジウム / 超弾性 / ステント / 医療用材料 / 生体適合性 |
研究実績の概要 |
現在、冠動脈疾患治療にはステントと呼ばれる網目状デバイスが用いられ、患部が完治後にも半永久的に留置されるため、再狭窄や血栓症を引き起こす可能性が問題で、医学界から生体吸収性ステントの開発が強く望まれている。特にMg合金が次世代ステント材料として期待され、欧米を中心に数多くの研究がなされているが、ステントに要求される材料特性を満たす合金はいまだ開発されていないのが現状である。また、体内での溶解速度を調整するために、ステント表面にはコーティングが施されているが、ステントの複雑形状に薄く均一に塗布することは非常に困難である。 そこで、この研究では自己形成不働態膜により生体内分解速度が調整可能な超弾性Mg合金ステントを提案する。提案するMg-Sc系合金は独自に開発したBCC相を利用する高強度・高延性合金で、ステントに要求される機械的特性を十分に満たしている。さらに、Mg系合金で初めて超弾性能を持った合金である。また、BCC単相化するために、大気中で700℃まで加熱する。その際に試料表面に非常に緻密で薄く均一な酸化膜が形成され、それ以上は内部が酸化されない不働態膜になることを確認している。この酸化膜が擬似体液中でも不働態膜として働けば、溶解速度を調整できる可能性がある。よって、本研究では当合金の生体分解性ステントとしての有用性の検討を目的とする。 超弾性能は現在の組成では低温でしか示さず、体温付近で超弾性を生じさせるためにスカンジウム濃度の最適化および第三元素添加による材料設計を行うことを中心に、同合金の擬似体液中における溶出速度と表面酸化被膜の関係について調査する。表面酸化膜は様々な温度・時間で大気中熱処理を行って形成させ、それぞれの組織・組成と膜厚さをTEMによって観察し比較する。また、スカンジウムの生体適合性に関する研究は過去にないので、本研究で初めて細胞毒性評価により調査する
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超弾性能を示す温度域とスカンジウム濃度の関係について明らかにすることができ、生体材料として使用できる目途がついた。また、最大の懸念事項であったスカンジウムの毒性を調査したところ人体に無害であることが分かった。さらに、擬似体液中での溶解速度が他のマグネシウム合金よりも遅いことが分かり、治療期間に十分な強度を維持できる可能性を確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
自然酸化膜だけでも十分に溶解速度を遅くすることに成功したが、より長期間腐食が進まないようにするために熱処理による酸化膜を利用した場合についても同様に調査する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画で購入予定であった設備費である「アノード分極測定装置一式100万円」を購入せず、大学の共通設備を用いて、この計画に必要な実験を行ったために余剰が発生した。アノード分極測定に関しては、同共通装置により十分な結果が得られている。また、その費用分はMg-Sc合金の母合金を2kg購入する費用に充てた。これにより、自ら10g程度溶解していた時に比べてサンプル量が飛躍的に増え、研究も当初の予定よりも順調に進んでいる。 また、繰り越した87348円も同様にMg-Sc母合金の購入費用の一部に充てる予定である。
|