研究実績の概要 |
酸化物強誘電体材料は、エコーやソナーといった超音波デバイス、記憶媒体であるメモリデバイス、環境振動や熱を利用したエナジーハーベスターといった様々な分野に応用されており、我々の生活に不可欠な材料であるが、材料を効率的に用いるためには外場に対する応答性を高める必要がある。誘電材料における応答は自発分極であり、分極の大きさは結晶構造すなわち相に依存するが、この研究では相の揺らぎを化学組成と弾性場という二つの熱力学的パラメータで制御することを目的とする。 当該年度は外部応力が出現する相に対する安定性を調査するために基板種を変え、整合性をもって成長するペロブスカイト型酸化物であるPb(Ti,Zr)O_3の相境界に対する影響を調査した。具体的には化学的積層法(CSD法)を用いて、Ti/Zr比を系統的に変化させた薄膜を異なった格子定数を有する基板上にエピタキシャル成長させ、成長過程における相変化挙動を透過電子顕微鏡を用いて調べた。 その結果、菱面相(Rhombohedral, R相)から正方晶(Tetragonal, T相)に変異する相境界が、基板との格子ミスマッチの増加とともによりTiが多い組成に変動することをあきらかにした。さらに基板との格子定数の差が増えるにつれて、界面における転位密度が増加し、それを起点とすることで90°ドメインが安定となることを明らかにした。 また実験技術という観点からは、走査型電子顕微鏡(STEM)における円環状検出器で得られた STEM-HAADF像を元データとして歪解析を行い、転位密度の定量化、ドメインの出現に対して有用な知見が得られることを明らかにした。
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