研究課題
本研究は、電気化学操作によって強い酸化雰囲気を作り出し、高原子価遷移金属イオンを生み出す手法の開発を目的としてスタートした。その結果、NiやCoなどの遷移金属を含有する酸化物を塩基性水溶液中でアノード分極させることにより、1.35 V vs. RHE近傍で酸化物中の遷移金属由来の酸化還元ピークが観察され、アノード分極によって高原子価遷移金属イオンを形成することが可能であることが明らかとなった。しかしながら、遷移金属の酸化ピークに対応する電気量は、酸化物を構成する遷移金属の量に比べて極めて小さかったため、本手法では遷移金属の一部しか酸化されないこともわかった。また、より低い電位で還元ピークも同時に観察されたため、この変化は化学的に可逆的であることもわかった。以上より、塩基性水溶液中においては、電気化学操作により高原子価遷移金属イオンを生み出すことは、限定的ではあるが可能であると結論できる。ただし、積極的に酸化状態を制御することは極めて難しい。以上の検討を行っていく中で、構造内の酸素欠損が酸素発生反応に対する触媒活性に大きな影響を与えることを明らかにした。慶應大学の神原陽一准教授および北見工業大学の平井慈人助教と協力し、構造内における酸素欠損の影響を調べるための物質としてSr2VFeAsO3-dを選定し、酸素欠損の位置や欠損どうしの距離と酸素発生反応に対する触媒活性に大きな関連性があることを見出した。すなわち、酸素欠損の数が増え、欠損どうしの距離が近づくほど、酸素発生反応の過電圧は小さくなり、触媒としての性能が向上することを明らかにした。本成果について学会発表およびプレスリリースを行うとともに、英文原著論文としても発表を行った。さらに大阪府立大学の山田幾也准教授の協力のもと、酸化剤を用いた酸素欠損量の制御法の開発を行った。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 備考 (2件)
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