研究課題
一次供給エネルギーの60%程度が未利用排熱として大気中に捨てられているわが国では、エネルギーのカスケード(縦つなぎ)利用が有効技術とされ、機械的エネルギーを介して電気的エネルギーを得るといった方法で温度ごとに切れ目の無いエネルギー変換を行い、排熱利用の高効率化を実現している。しかし、機械的エネルギーを介した熱利用は300℃の壁を持って終了するため、本研究は、300℃以下で“熱を操る”ことを念頭にしつつ、熱-電気変換に関して革新的かつ全く新しい発想に基づく材料学的研究に挑戦することを目的としている。一方、車両や電子機器関連分野では、熱を逃す高効率な新冷却システムを渇望しており、この温度域とも一致する。つまり、300℃以下で“熱を操る”ことが強く求められる。初年度は、熱膨張特性が大きく異なる2種以上の焦電/非焦電材料を無拡散状態で0-3型 複合組織化することに成功し、その機械特性および電気特性を評価し、粉末状のセラミックフィラー材の充填濃度と複合材の機会特性との相関を調べた。さらに2年度目の研究では、その異種界面で温度変化に対して誘起される熱膨張が観測できる装置を製作し、機械的変形挙動および歪電挙動(環境発電量)を調べた。そこで最終年度では、熱-電気変換に関して、「温度の時間的変化」に着眼した全く新しい発想に基づく材料科学研究を進めた。線膨張係数が大きく異なる耐熱高分子と焦電セラミックスからなる複合組織材料中の種材料界面で、加熱・冷却時に誘起される瞬間的な熱膨張/収縮歪みを経由する「二次の焦電係数」を一次(熱電直接変換)と分離して観測することに成功し、仮説を裏付けた。その結果、廃熱の再生エネルギー化や、熱を逃す高効率な新冷却システムの設計など、熱を操る新奇な熱マネージメント材料開発の突破口を得た。これらの成果を取りまとめて論文発表および学会発表を行った。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件)
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