研究実績の概要 |
グラファイト構造をもつマグネシウム合金超伝導体である、2ホウ化マグネシウム(MgB2)の薄膜に対して、ソフト化学的溶液反応を行うことにより、その臨界電流密度(Jc)が向上することを明らかにした。ソフト化学的処理による超伝導転移温度Tcの低下は見られなかった。 MgB2は、金属系では最高のTcをもち、そのJcも高い。しかし、MgB2の固溶域は狭いため、高温固相反応によるドーピングは困難であった。これに対して、電池反応をモデルとして、グラファイト構造であるMgB2の層間のマグネシウムイオンを脱挿入して、その超伝導特性を明らかにすることを試みた。 研究期間2年のうち、初年度は、粉末試料と薄膜配向試料についてドーピングの可否を調べた。粉末試料については、酸化皮膜が多いために、界面抵抗が大きく目的の反応が困難であることがわかった。酸化皮膜を抑制した薄膜配向試料を用いたところ、マグネシウムイオンの脱離によると思われる酸化電流を確認した。最終年度は、薄膜試料に対してJc測定を行い、Jcの向上を確認した。特に高磁場側でJcが向上した。 このほか、ソフト化学的ドーピング手法を探索する中で、新しいエーテル系非水系電解液を副次的に見いだすことができた。室温でのMg, Al電析が可能なグライム系電解液の他に、クラウンエーテルを成分とする新規溶媒和イオン液体を見出した。すなわち、プロトン伝導性をもつヒドロニウム溶媒和イオン液体や、超酸化物ラジカルを構成イオンとする超酸化物イオン液体を合成し、その基礎物性を明らかにした。
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