研究実績の概要 |
近年,Ni-H電池のRE(希土類)-Ni系負極材料はA2B7型(プロトタイプ:La2Ni7)であり,類似の構造を持つ2種類の物質が単位胞レベルで周期的に積層したブロック層(AB5およびA2B4ブロック)からなるインターグロウス(IG)構造をもつが,僅かな合金元素量の相違でブロック構造が全く異なるIG化合物が形成されることを見出した.特異なブロック構造を持つIG化合物の方が通常構造の化合物より優れた水素吸放出特性を示すことを発見するに至り,IG構造のブロック層の組み換えによりIG化合物の物性を大きく変え得るとの着想を得,可能な限り,異なる系の異なるブロック構造を有するIG化合物をSTEM原子直接観察,第一原理計算を駆使して,探索,発見し,ブロック組み換えを支配する因子,その支配因子により決定される組み換えブロック構造を解明し,その水素吸放出特性に及ぼすブロック組み換え効果を系統的に論じ,IG化合物のマルチモルフィズムと構造物性を明らかにすることを目的とする. 本年度は,RE2Ni7型,RE5Ni19型化合物およびその中間組成化合物(RE2Ni7とRE5Ni19の組み合わせブロック構造を持つRE3Ni11型化合物で等Ni組成ラインに沿って種々のMg量を持つ試料)に集中して実験研究を行った(RE=La, Nd, Sm). RE5Ni19型合金では,予想できるRENi3型,RE2Ni7型,RE5Ni19型ブロック層に加えてRE3Ni11型ブロック層も含まれる場合が観察できたが,相と呼べるほど長周期性を持つ構造は発見することが出来なかった.STEM内元素分析によりブロック組み換えブロックは必ずMg量の多寡を含み,(RE,Mg)2Ni4ユニット層の収縮がブロック構造出現の最大の決定因子であると結論できる.
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