ナノポーラス半導体は、太陽電池の光電極や、光触媒、光電子材料、熱電素子などの、幅広い分野において新規応用への発展が期待される。 しかし、従来のナノポーラス材料の形成法では、ポーラス体を構成する物質が、多結晶体またはアモルファスからなるものしか得られない。多結晶やアモルファスでは、電荷キャリアの移動を妨げる欠陥(結晶粒界など)が多く存在するために、電気的特性が良いものは得られない。このことが、ナノポーラス半導体を利用した高機能デバイスの実現を阻む要因となっている。 本研究では、三次元ナノポーラス構造をもちながら、なおかつ、高い電気的特性(高キャリア移動度)を示す新規半導体材料の実現を目的とする。欠陥密度の高い多結晶体やアモルファスではなく、半導体単結晶からなるナノポーラス材料を形成する溶液成長プロセスの確立を目指した。 作製プロセスは以下の通りである。1) 単結晶基板上に、最終的なポーラス構造のテンプレートとなるポーラス構造層を形成する。基板上には、次の工程でエピタキシャル成長させる半導体のシード層をあらかじめ製膜しておく。2) 上記ポーラス層をテンプレートとし、ポーラス層の細孔内に目的の半導体をシード層からエピタキシャル成長させる。3) 最後に、テンプレートを除去することで、半導体からなるポーラス構造体を得る。 本プロセスで得られたポーラス半導体のキャリア濃度および移動度をホール効果測定によって明らかにし、従来の方法で得られる多結晶体からなるポーラス材料よりも優れた電気特性をもつことを実証した。
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