研究課題/領域番号 |
17K18989
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
入澤 明典 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (90362756)
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研究分担者 |
長島 健 摂南大学, 理工学部, 准教授 (60332748)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | FEL / THz / FIR / LIPSS / nonlinear |
研究実績の概要 |
大阪大学産業科学研究所附属の量子ビーム科学研究施設にある遠赤外・テラヘルツ領域の自由電子レーザー(THz-FEL)を用いて、半導体Siウエハ上に波長未満の微細構造であるレーザー励起周期表面構造(LIPSS: Laser Induced Periodic Surface Structure)の形成をおこなった。従来の近赤外領域(NIR)のレーザーで見られるLIPSSに比べ、THz-FELではLIPSS間隔が約1桁小さい波長比を示し、NIRレーザーで提案されてきたLIPSS発現機構が適用不可能であることが分かった。これにより新しい発現機構の構築が必要となった。LIPSS間隔とレーザーの様々なパラメータの間にどのような関係性があるのか詳しく調べるために、THz-FELの波長、強度、パルス数を系統的に変化させてSi表面に照射し、LIPSS間隔のパルス数依存性に自己組織化臨界現象で見られるスケール則が成り立っていることを発見した。これらの結果より、レーザー波長によらないユニバーサルなLIPSS発現機構の発見につながることが期待できる。以上を国内学会(日本物理学会、放射光学会、FEL研究会、他)、国際会議・セミナー(WIRMS2017, superstripes2017, Seminarlndustriali2018, etc)で発表するとともに(招待講演含む)原著論文として出版した[1]。 [1] A. Irizawa et al., Appl. Phys. Lett. 111, 251602 (2017)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
THz-FELによるSi基板表面に形成されたLIPSSについて実験考察をおこない、第1報として原著論文の形でまとめた。国内学会および招待講演を含む国際会議での講演をおこなった。スケーリング則からLIPSS形成のメカニズムとして非線形領域での自己組織化臨界現象の可能性を示し、レーザー波長によらないLIPSS間隔の法則性を調べる必要性を提言した。
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今後の研究の推進方策 |
LIPSS形成されたSi表面の破断面の観測や結晶性の変化など微視的状態を観測する。様々な物質に対する実験、および中赤外(MIR)FELなどの波長の異なる光源による実験をおこなう。LIPSS形成過程につて考察をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた調達物品よりも高性能なもの(高速応答、高時間分解能)を新たに計画していることと、これにより実験精度の向上が見込めるため、予備実験をおこなっていることにより最終的な調達に遅れが生じていることが理由である。また、国際会議での招待講演依頼が複数生じたため、開催年度に合わせた旅費使用を計画していることも理由である。
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