研究実績の概要 |
大阪大学産業科学研究所附属の量子ビーム科学研究施設にある遠赤外・テラヘルツ領域の自由電子レーザー(THz-FEL)および京都大学エネルギー理工学研究所にある中赤外領域のFELを用いて、半導体Siウエハ上に波長未満の微細構造であるレーザー励起周期表面構造(LIPSS: Laser Induced Periodic Surface Structure)の形成に関する研究をおこなった。パルス構造が異なるため単純には比較できないが、中赤外FELでは非線形応答と不可逆的破壊までの領域が非常に狭く、安定したLIPSS形成は観測されず、赤外線の波長に大きく依存する結果となった。今後、FEL運転モードを変更することでさらなる詳しい研究をおこなう予定である。THz-FELでは高速な検出器とオシロスコープを導入することでマクロパルスに含まれるミクロパルスごとの非線形吸収応答を分離できるようになり、LIPSS形成に関する時間応答が観測可能となった。同時に小型の赤外分光システムを構築し、照射条件下での分光特性の変化を観測できるようになった。今後、LIPSS形成過程を時間分解で観測することが可能となった。微視的な情報としては、顕微ラマン分光測定により、LIPSS形成に伴い結晶格子間隔が増大することを明らかにした。今後、光電子分光やESRにより、結晶構造に関する微視的な変化を詳細に調べる予定である。以上の結果を国内学会(日本物理学会、放射光学会、FEL研究会)、国際会議(主に招待講演)(ICSM2018, LEES2018, Superstripes2018, IRMMW-THz2018)で口頭発表した。
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