研究課題/領域番号 |
17K18991
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白土 優 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70379121)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | Cr2O3 / 重金属 / スピン偏極 / 交換結合 |
研究実績の概要 |
本研究では、Fe, Coなどの強磁性元素を用いない系において、界面交換結合を用いた非磁性元素のスピン偏極に取り組んでいる。特に、非磁性重金属(Ptなど)/反強磁性絶縁性酸化物(Cr2O3など)積層膜を研究対象として、非磁性重金属のスピン偏極(非磁性元素中に磁気を誘起させる)の可能性について電気特性と磁気特性の両面から検討を進めている。平成29年度は、異常ホール効果(AHE)と磁気円二色性(XMCD)を主な検出手法として研究を進めた。平成29年度に得られた主な結果を以下に記す。 (1)超薄膜領域にある良質なエピタキシャルCr2O3薄膜の生成技術を確立した。 (2)(1)で確立した手法を用いて作製したPt/Cr2O3積層膜において、通常の非磁性金属では観測されない磁場に対する非線形なAHEを観測した。 (3)観測した非線形AHEの測定温度、膜厚依存性を基に、非線形AHEの発現メカニズムの解明を進めた。 (4)硬X線、軟X線によるXMCD測定を基に、非線形AHEの起源となる磁気秩序のメカニズムについて検討を進めた。 これらの結果については、2018年春の日本金属学会において一部を発表しており、現在、詳細なメカニズムの検討を連携研究者とともに進めている段階にある。平成30年度は、平成29年度に得られた成果(特に非線形AHE)を取り掛かりとして、Pt以外の重金属、および、軽金属系との比較を進めることで、観測されたAHEと非磁性重金属におけるスピン偏極の可能性を明確にする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、Pt/Cr2O3系において磁気秩序の可能性を示唆する異常ホール効果を検出できたことが主な理由である。現在は、観測された異常ホール効果とPtのスピン偏極の可能性について、磁気円二色性測定を基に検討を進めている。仮に、観測された異常ホール効果がPtのスピン偏極を起源とするものではない場合、これまでに考えられていたメカニズムとは全く異なる新規メカニズムの発見につながる可能性があり、この意味においても新しい成果の創出が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に得られたPt/Cr2O3系における非線形異常ホール効果の起源を明確にすることを最大の目的として、Pt以外の重金属、軽金属との比較を進める。また、磁気円二色性測定などを用いて界面磁気モーメントの直接的な検出を試み、Ptのスピン偏極、および、その他の可能性について電子論的起源に基づく解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた試料作製装置用のスパッタリング装置制御用ガス(N2)を年間2本と想定していたが、年度末に当たってわずかではあるが使用可能な残量が生じたため新規のガス購入を平成30年度に実施するため。
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