研究課題/領域番号 |
17K18996
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
洞澤 功子 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (20165567)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 骨補填材 / TiO2ナノ粒子 / 複合材料 / Fibrinogen / Chitosan |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ナノTiO2粒子に骨形成促進を図るための誘導因子を付与して複合材料とした、新しい人工骨補填材の開発である。平成29年度に、当初の実験計画を見直し、まずナノTiO2粒子に骨形成促進を図る誘導因子を付与することから研究を開始し、複合材料としての人工骨補填材の創製は、ほぼ成功した。FibrinogenをナノTiO2粒子表面にコートし、さらにChitosanをその表面に付与することにより、新しい骨補填材料の原型を作ることができた。ナノTiO2粒子は、水溶液中で酸性を示すため、細胞培養にて“毒性を示す”という結果が得られることが多い。また一般に細胞培養においてナノ粒子は貪食作用によって細胞内に取り込まれてしまうため、良好な結果が得られない。そこでナノ粒子を用いた細胞培養においては、培養方法に工夫が必要である。しかし本研究においては、骨形成誘導因子の付与によって、細胞培養における、これらの障害を払しょくさせることができた。骨形成促進誘導因子を付与したナノTiO2粒子は、従来の方法で細胞培養が可能であることが物性試験から示唆された。これは重要な知見であり、その裏着けを得るためにも骨芽細胞の培養へ研究を進める。 さらにナノTiO2粒子のアナターゼ、ルチル、ブロッカイトの3タイプの結晶は、ナノ粒子ではあるが、それぞれナノサイズにおける大きさが異なる。当初は、これら粒子径の異なる結晶の混合を考えたが、人工骨補填材としての使用に際しては、粒子径の大きさによる使い分けを考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ナノTiO2粒子の物性の検討によって有用な新しい知見は得られているが、その物性の検討に時間が掛かり、未だ細胞培養に研究を進めていないため、新しい骨補填材の開発としては遅れている。集中した実験時間を要する細胞培養に着手できない理由の一つ目は、講義、実習、試験およびその監督に追われたことである。二つ目の理由は、当講座が学会の地方会幹事となったため、その準備等を一手に行ったことである。三つ目の理由は、平成30年末より研究室および周辺の耐震工事が始まり、実験器具等の移動やかたつけの作業があったことである。そこで補助事業期間の延長を申請し、承認された。
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今後の研究の推進方策 |
新しい人工骨補填材の原型が創製できているため、今後は、その骨誘導能の確認を細胞培養にて行う。またChitosanの抗菌効果についても抗菌試験を行う。さらにナノTiO2粒子3タイプの結晶形は、それぞれの使い分けを検討する必要がある。それには、材料試験にて機械的強度の評価を行う。さらに、それらの結果を、現在市販されている人工骨補填材のそれと比較検討する必要もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の内では、最も経費を必要とする細胞培養実験を行っていないため、未使用額が多くなっている。しかし平成31年度は、「今後の研究の推進方策」に記したように、細胞培養を行い経費を順次使用して行く予定である。
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