研究課題/領域番号 |
17K19007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河原 正浩 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50345097)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 抗体 / 膜蛋白質 / スクリーニング / 親和性成熟 |
研究実績の概要 |
膜蛋白質は医療における重要なターゲットであり、膜蛋白質抗原に対する高特異性・高親和性抗体を迅速、簡便かつ確実に取得する系の開発が必要とされている。そこで本研究では、動物細胞膜上に提示させた標的膜蛋白質抗原と結合する特異的抗体をin vitroで迅速・簡便に選択でき、さらに抗原に対してより高親和性の抗体を簡便に得るための技術開発に挑戦する。具体的には、標的膜蛋白質抗原と、二量体形成により増殖シグナルを伝達する受容体を連結した融合蛋白質を細胞表面に発現させる。この細胞に二量体化抗体ライブラリーを発現させると、抗原特異的抗体は、その分泌元の細胞表面の抗原‐受容体融合蛋白質に優先的に結合して増殖シグナルを伝達する。従って、細胞増殖を指標として簡便に抗原特異的抗体遺伝子を発現する細胞を選択できる。このとき、抗体の二量体化を小分子リガンド依存的に制御する仕組みを導入し、リガンド濃度を変化させることで、より高い親和性の抗体を得る手法を開発する。 本年度は、標的膜蛋白質抗原としてErbB2、二量体形成により増殖シグナルを伝達する受容体としてIL-6受容体のシグナル伝達サブユニットgp130を用いて抗原側の融合蛋白質を構築した。一方、二量体化抗体側は、既知の抗ErbB2一本鎖抗体クローンと小分子リガンドAP20187依存的に二量体を形成するFKBP(F36V変異体)を用いて融合蛋白質を構築した。構築した融合蛋白質遺伝子をそれぞれ別の抗生物質耐性マーカーを持つレトロウイルスベクターに組み込み、Ba/F3細胞に導入した。抗生物質選択後の細胞に対してウエスタンブロッティングを行った結果、双方の融合蛋白質の発現が確認できた。増殖アッセイを行った結果、リガンドAP20187依存的に細胞が増殖することが確認できた。従って、本系によって抗膜蛋白質抗体の結合性を評価できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は増殖誘導型の抗原/受容体融合蛋白質とリガンド依存性二量体化抗体の構築と、細胞増殖をリードアウトとする結合性評価系の検証が目標であった。実際に膜蛋白質ErbB2とそれに対する抗体クローンを用いて実験した結果、リガンド依存的な細胞増殖活性が見られたことから、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本系をベースにして抗体ライブラリースクリーニングを行い、抗膜蛋白質抗体の親和性成熟を実現できるかを検証する。 また、増殖シグナル伝達型受容体の代わりに死シグナル伝達型受容体を用い、既存の抗体クローンを用いた二量体化抗体と競合させて親和性成熟抗体を得る系も開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況から、研究に必要な物品が次年度に生じることが予想されたため、次年度使用額が生じた。主に物品費、旅費に支出する予定である。
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