研究課題/領域番号 |
17K19012
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清水 浩 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (00226250)
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研究分担者 |
松田 史生 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50462734)
戸谷 吉博 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (70582162)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | がん細胞 / シミュレーション / 代謝フラックス解析 / 生物情報工学 |
研究実績の概要 |
がん細胞は大量の栄養を消費し、Warburg効果と呼ばれる特異的な代謝状態をとることが古くから知られている。最近では、グルコースやグルタミン代謝など糖やアミノ酸代謝を変化させることで増殖が促進されていることが明らかになっている。また、炭素中枢代謝に関連する遺伝子の変異が特異的な代謝物質の蓄積を引き起こし、がん化が促進されるという現象が発見され、遺伝子と代謝とがんの進展という階層を跨いだ細胞内ネットワークの摂動が、がんに及ぼす影響の解明が注目されている。本研究においては、13C標識された化合物を細胞培養系に添加し13C標識を細胞内代謝中間体中から解析することにより炭素中枢代謝におけるがん細胞の特徴を明らかにする。また、このような中枢代謝の情報をもとに、がん細胞の代謝変化を予測可能でゲノムワイドな代謝モデルを構築することを目的とする。 本年度は、シミュレーションを行うため、細胞のゲノム情報から代謝情報をすべて化学量論の形式で抽出し、統一的に扱うプラットフォームの整備を行った。また、シミュレーションで検証のために必要な実験データの取得を行った。がんの炭素中枢代謝を実験的に決定するため、細胞内の代謝を記述する化学量論モデルを開発した。13C標識された化合物を細胞培養系に添加し、代謝中間体に含まれる13C標識を計測することで、炭素中心代謝のフラックス解析システムを開発した。細胞培養系に13C標識グルコース、13C標識グルタミンなどを添加し、培養の経時変化、細胞内の代謝中間体の濃度、および、代謝中間体の13C標識割合の定常状態における値を定量した。炭素中枢代謝の酵素反応の化学量論や骨格炭素の移動を記述したモデルを構築し、定量した培養データ及び13C標識割合を最もよく説明する代謝フラックスを決定するシステムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、がん細胞の代謝を予測するシステムの開発を目指している。H29年度は、そのためのゲノムワイドな代謝モデル基盤構築と実験的代謝フラックス解析システムを開発し、がん細胞培養系へ適用できることを確認した。当初の予定通り研究は進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ゲノムワイドな化学量論モデルによってシミュレーションを実施し、予測によって実験で得られた代謝フラックス解析データを説明可能か、異なるがん種由来の細胞の代謝状態の実験結果との比較を通じて検証する予定である。
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