研究課題/領域番号 |
17K19018
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
杉浦 慎治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (10399496)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 組織工学 / 細胞 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、三次元組織を圧力勾配場に配置して培養するために、多孔性膜を組み込んだ圧力駆動循環培養型マイクロ流体デバイスを製作した。今年度は圧力勾配の大きさを変更するとともに、細胞導入と気泡除去を行いやすくするために流路構造を変更した。前年度同様、フォトリソグラフィーとレプリカモールディング法を用いてマイクロ流体デバイスを加工した。加工されたマイクロ流体デバイスの寸法測定と流量測定を行い、加工されたマイクロ流体デバイスの寸法が目標値とやや異なることが確認されたが、流量測定の結果より、細胞培養試験での使用に支障がないことが確認された。 加工されたマイクロ流体デバイスを用いて、前年度同様、ヒト肝癌由来細胞HepG2 とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の共培養を行った。この際に、細胞混合、培養容器への導入、静置培養、加圧循環培養の各プロセスの工程とスケジュールについて検討し、三次元組織体の形成とその維持について経時的に観察し、評価を行った。培養容器のコーティングと静置培養期間が三次元組織体の容器への接着に大きく影響することが確認された。また、共培養を行う際に間葉系幹細胞等を混合し、細胞組成を変えることで、血管様構造の形成やCYP3A4活性等の肝組織の機能向上がはかれるか検討した。細胞組成に応じて組織体の凝集の程度や細胞の局在、培養容器への接着の状況に変化が生じることが観察された。一方、検討した範囲においては、血管様構造の形成に伴う機能向上が観察される条件は見いだされなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って研究を進めたところ、肝組織の機能が向上する条件は見いだされていないが、新規な培養容器と培養方法の開発が進んでおり、学会発表を行うことができため、概ね順調に伸展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画通りに血管網を配備した三次元肝組織の構築・成熟課程について検討を進める。一方、現時点で共培養によって肝機能が向上する培養条件をみいだすことができていないため、今後は細胞組成をHepG2 単独培養について培養液の灌流の効果の検証に焦点を絞った実験も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の未使用額が当初の予想を超えた金額で発生しており、概ねそのまま次年度使用額となっている。次年度使用額は人件費に充て、当初予定していなかった人材を雇用し、当初の計画を超えた研究推進を目指す。
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