研究課題/領域番号 |
17K19019
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
海住 英生 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (70396323)
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研究分担者 |
西井 準治 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60357697)
芥川 智行 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60271631)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | スピントロニクス / 磁気ナノ構造 / 誘電体 / 光電流 / トンネル効果 |
研究実績の概要 |
絶縁体中に磁性ナノ粒子を分散させた磁気ナノグラニュラーは、室温にて磁気誘電効果を示すことから、近年、次世代の超高感度磁気センサー・高周波インピーダンスチューナブルデバイスとして大きな注目を集めている。しかしながら、その誘電率変化は最高でも数%程度となっており、応用上十分な感度を有していない。そこで、本研究課題では、新たな磁気誘電材料としてペロブスカイト型磁気ナノグラニュラーを提案し、本材料において光誘起型巨大磁気誘電効果の発現を目指す。本研究課題の推進は、光学、磁性(特にスピントロニクス)、及び誘電性が互いに融合した新たな学際領域を創出させると同時に、次世代高性能磁気センサー・高周波デバイスの実現に向けた新たな設計指針を導くと期待できる。 本研究目標を達成するため、当該年度では、光誘起型磁気誘電効果の測定システムを構築した。誘電率測定には交流4端子法を用いた。測定帯域は20Hzから1MHzとした。また、試料への磁場印加には強磁場電磁石を用いた。本電磁石では1テスラの磁場が印加可能である。これにより磁気ナノグラニュラーの磁化を飽和させることができる。試料への光照射には、赤外レーザー、及び可視光レーザー(赤、緑、青)を用いた。本光学系では、波長依存性のみならず、レーザーパワー依存性、及び直線偏光の偏光方位依存性を調べることができる。本測定システムを用いることで、Fe系磁気ナノグラニュラーの磁気インピーダンス特性を調べた結果、室温にて磁気誘電効果の観測に成功した。また、ペロブスカイト系光応答材料の光誘電特性を調べた結果、室温にて光誘電効果の観測にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を推進することにより、光誘起型磁気誘電効果測定システムを構築することができた。また、ペロブスカイト型磁気ナノグラニュラーの作製に先立って、Fe系磁気ナノグラニュラー、及びペロブスカイト系光応答材料を作製した結果、それぞれの材料において、磁気誘電効果、及び光誘電効果の観測に成功した。これらの結果は研究実施計画に従って得られた研究成果であり、これにより平成30年度の研究内容を予定通り遂行できるものと考えられる。このような事由から本研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、平成29年度に構築した測定システムを用い、ペロブスカイト型磁気ナノグラニュラーの光誘起型磁気誘電特性を調べる。本研究代表者らは、数年前、強磁性トンネル接合において世界最高の誘電率変化(=155%)の観測に成功した。このときの磁気誘電効果は、デバイ・フレーリッヒモデルに基づいた理論計算により極めて良く説明ができた。本モデルは動的誘電率の算出に極めて有効で、Fe系磁気ナノグラニュラーにおいてもその定量的理解に成功している。本モデルをペロブスカイト型磁気ナノグラニュラーに適用したところ、巨大な誘電率変化が得られることが理論的に明らかになった。本理論計算による設計指針のもと、ペロブスカイト型磁気ナノグラニュラーにおいて光誘起型巨大磁気誘電効果の発現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費の節減を行ったため、次年度使用額が生じた。 経費の節減の結果生じた使用残額については、平成30年度に成果発表のための旅費に使用する。
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