研究課題
簡易診断技術は予防医療・テーラーメイド医療の進展を支える基盤技術の一つである。酵素センサーは,酵素の基質選択的触媒特性を利用した信頼性の高い簡易診断技術であるが,センサー応答(感度・ダイナミックレンジ)に関する技術的障壁がある。本研究では,BSAヒドロゲルと脂質二分子膜の特性を組み合わせた『高感度・高ダイナミックレンジな酵素センサー』を新たに設計し,次世代の非侵襲的酵素センサー開発を第一の目的として研究を行っている。さらに,設計するセンサー系を応用し,新しい『基質応答型の薬物放出システム』の創出を第二の目標としている。H29年度においては,以下の研究項目を遂行した。(1)高感度・高ダイナミックレンジなグルコース計測用GODセンサー:BSAゲルの作製条件を精査し,膜状や微粒子状ゲルとしての作製を可能とした。また,ゲルの膨潤・収縮に及ぼす温度やイオン強度の影響を精査した。これら予備検討を踏まえてBSAゲルへのGOD導入を行い,ゲル内での酵素触媒反応を確認した。さらに,LB膜作製法を模したBSAゲルへの脂質膜被覆を行うことで,ゲル内酵素反応産物である色素蓄積が可能であることも確認した。上記の結果は,BSAゲルを利用することで,目的とする信号蓄積系が開発可能であることを示すものである。一方で,ゲル内酵素反応の信号物質として,GOD系で広く用いられているアミノアンチピリン系試薬が適さないことも分かってきた。そこで,信号物質の新規合成を研究課題として加えることとした。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」で記したように,当初の計画であったBSAゲルの作製と脂質膜被覆に関する研究課題の進展があった。一方で,BSAゲル酵素反応産物として用いているアミノアンチピリン系試薬では,効果的な信号蓄積や高感度化に難があることも分かってきた。そのため,本系で適切な信号物質の開発も含めて,研究を遂行している。
これまでの研究を踏まえて,本研究で開発する系において適切な信号物質の開発も重要と考えている。この点も踏まえた今後の研究計画は以下の通りである。(1)高感度・高ダイナミックレンジなグルコース計測用GODセンサー:適切な信号物質として「可逆な発色応答を示す信号物質」を設計し,その新規合成を行っていく。新しい信号物質の基礎特性を明らかとした後,その特性に合わせた酵素センサーシステムを再設計し,作製していく。(2) グルコース応答型の薬物放出システム開発:BSAゲルの特性を利用した薬物放出システムを作製する。H30年度は,特に薬物タンクであるナノ多孔粒子との複合化を中心に精査していく。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Langmuir
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
J. Mater. Chem. A
巻: 5 ページ: 20244-20251
10.1039/c7ta04859a
http://anal.sci.ibaraki.ac.jp/yama/yamalab.html