研究課題/領域番号 |
17K19022
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
山口 央 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (10359531)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 酵素センサー / BSAゲル |
研究実績の概要 |
本研究では,BSAヒドロゲルと脂質二分子膜の特性を組み合わせた『高感度・高ダイナミックレンジな酵素センサー』を新たに設計し,次世代の非侵襲的酵素センサー開発を第一の目的として研究を行っている。さらに,設計するセンサー系を応用し,新しい『基質応答型の薬物放出システム』の創出を第二の目標としている。平成30年度においては,以下の研究項目を遂行した。 (1) 高感度・高ダイナミックレンジなグルコース計測用GODセンサー:BSAゲルの作製条件を精査し,膜状や微粒子状ゲルとしての作製を可能とした。また,ゲルの膨潤・収縮に及ぼす温度やイオン強度の影響を精査した。これら予備検討を踏まえてBSAゲルへのGOD導入を行い,ゲル内での酵素触媒反応を確認した。また,GODを細孔内に導入したGOD固定化メソポーラスシリカ粒子を作製し,細孔内GODの酵素活性を確認した。上記の結果を踏まえて,GOD固定化メソポーラスシリカを内包したBSAゲル膜を作製し,擬似的に模倣した汗・呼気試料に対するグルコース計測を行ったところ良好なセンサー応答を得た。感度については今後の課題であり,センサー構造の再設計や信号物質の高感度計測プローブ分子の合成から解決していく予定である。 (2) グルコース応答型の薬物放出システム開発:BSAゲルの特性を利用した薬物放出システムを作製する。平成30年度は,特に薬物タンクであるナノ多孔粒子との複合化を中心に検討を行い,目的とする100 nm以下のメソポーラスシリカ微粒子の合成を行い,そこへのBSAゲル被覆化を行ってきた。予備実験からは,BSAゲル被覆メソポーラスシリカナノ微粒子からの薬物放出が観察されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で記したように,汗や呼気を対象としたグルコースセンサーを試作し,応答確認を行ってきた。一方で,測定感度に問題があり,センサー構造の再設計や信号物質の高感度計測プローブ分子の合成から問題解決を図っているために若干の遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 高感度・高ダイナミックレンジなグルコース計測用GODセンサー:感度向上が最重要課題であり,センサー構造の再設計や信号物質の高感度計測プローブ分子の合成から解決していく。プローブ分子の合成と基礎物性評価は終了しているため,プローブ分子のセンサー導入法の適切化を行う。 (2) グルコース応答型の薬物放出システム開発:メソポーラスシリカ微粒子へのBSAゲル被覆化条件を最適化し,安定的な被覆化を達成する。その後,温度などによる薬物放出応答を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に若干(5万円程度)の残額があったが,平成31年度予算と併せて予算の有効活用を図ることとした。平成30年度の繰越金と平成31年度の助成金は,実験で必要となる試薬など消耗品費,発表のための旅費,論文投稿料などで使用する。
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