研究課題
微小な超早期段階の悪性腫瘍を,蛍光内視鏡によって『安全・高感度に映し出して「その場で」治療できる材料』を創製できれば,がんの撲滅が実現する。これまでの材料候補では,イメージングにおいて低い生体安全性・発光効率・耐光性が問題であり,更には,治療との両立には至っていない。そこで,本研究では,生体安全性が高く微小がん部位を高精度に細胞スケールでイメージングして治療できるナノ結晶を創製する目的である。当該年度においては,細胞結合性分子を表面に修飾した葉緑素 (Chl) 含有水酸アパタイト (HAp) ナノ結晶を用い,細胞へ結合・取込させて細胞標識挙動を評価し,高感度・高選択的なイメージングと治療を実証した。具体的に,先ず,濃度の異なるナノ結晶の培地分散液を正常細胞へ添加し,分裂・増殖挙動を計測し,ナノ結晶の生体安全性を見出した。次いで,細胞周期が異なるがん細胞の集合体「モデル微小がん」へChl含有HApナノ結晶の培地分散液を添加し,細胞周期と細胞接着密度「モデル微小がんの大きさ」に対するナノ結晶の結合・取込挙動を解明した。特に,細胞へChl含有HApナノ結晶を播種してから数日間の細胞膜表面への結合反応およびレセプター介在性エンドサイトーシス経路による取込反応が顕著であることを見出した。つまり,Chl含有HApナノ結晶のがん細胞への特異取込を解明した。さらに,がん細胞内へのナノ結晶の取込後,抗がん剤を使用せずに,レーザー光を照射し,Chlの三重項励起状態が細胞内の基底状態の酸素とエネルギー交換してO(1D)を放出させ,がん細胞がO(1D)により障害性を誘起・死滅させる技術を確立した。光照射時間とO(1D)生成量の関係を解明し,光誘起放出開始時間と必要照射時間を最適化した。以上より,光検出した微小癌を「その場で」治療する技術を実現できた。
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