研究実績の概要 |
磁性酸化物中を伝搬するスピン波によって,磁壁を駆動できるかどうかを明らかにし,工学的に利用可能にすることが本研究の目的である。絶縁体中の磁壁がスピン波で思い通りに制御ができるようになれば,磁気で磁気の情報をシフトできるようになり,電気と違って,密集した配線が不要で,低消費電力のレーストラックメモリや,スピン波光シャッター,レーザー向け薄膜Qスイッチなどに応用できる。角運動量の受け渡しを利用した,スピン流による磁気ドメイン駆動のアナロジーで,絶縁体中におけるスピン波の駆動が生じるかを,磁気光学関連の計測技術を利用して調べた。最初に,スピン波の磁壁移動に必要なスピン波注入に必要な高周波システムの設計・構築を行った。アンプ等の設計を特注で行った。スピン波を注入する先にあたる,絶縁体を形成し,静的および動的な磁気応答を評価した。本研究の一部である特に高周波磁気特性の評価方法は,[Scientific Reports, 7, 7898 (2017).],スピン波の磁気光学効果の増幅方法の改善検討については,[Scientific Reports, 7, 13805 (2017)]において,詳細に報告を行った。次に,これらの知見に基づき,スピン波を伝搬し,かつ,磁気ドメインを発現する磁性媒体を作製し,これの高周波帯域でのスピン波伝搬スペクトルを測定した。これは,査読付き論文[Advanced Electronic Materials, 4, 1800106 (2018).]にて発表した。さらに,レーザー向け薄膜Qスイッチ応用に適した磁性媒体の組成探査を行い,測定した磁気光学応答等をまとめ,[Japanese Journal of Applied Physics, 57(6), 061101 (2018).]にて発表した。
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