研究課題/領域番号 |
17K19030
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 智貴 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (60648070)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | グライコベシクル / 分子透過能 / 核酸合成 |
研究実績の概要 |
核酸医薬はその優れた薬効から、従来の薬に取って代わる次世代の医薬である。その一方で、生体内での安定性の低さから、体内への送達にはキャリアが必要となる。しかし、カチオン性核酸送達キャリアでは、生体内で不安定・毒性が高く、その他の核酸キャリアでは、核酸の保持率が低いという課題がある。また、製造コストも高くより安価に製造できれば、核酸医薬の普及に繋がる。 本研究では、申請者が開発した分子透過を示すグライコベシクルに細胞内送達能を付与した上で、ベシクルの分子透過能を利用したベシクル内酵素反応による核酸増幅を行う。さらに、得られた機能性核酸内包ベシクルの細胞内デリバリーと遺伝子抑制効果の評価を行う。これにより、従来の核酸キャリアが持つ課題を一挙に克服した、新たな核酸送達システムを構築する。
本年度は、当初の予定通り細胞膜透過型ペプチドであるTATをリンカーを介してPPGに修飾したポリマーを合成し、糖鎖ポリマーとの混合により細胞内送達能を付与したグライコベシクルを作成した。得られたベシクルは、エクストルーダー処理を行なう事により、サイズの制御が可能である事も判明した。また、血清存在下でも安定であり、酵素などのタンパク質を安定に内包する事ができる事も明らかになりつつある。また、次年度の予備検討としてローリングサークル増幅法によるRNAの増幅試験を行い、VEGF発現抑制配列を持つ鋳型DNAからRNAを合成できる事を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時に、H29年では、細胞内送達能を持つグライコベシクルの作成を目的としており、実際にTATペプチドを提示したグライコベシクルの作成できている事やその機能評価を行なえていること、加えて、予備検討としてRCA反応によりRNA合成ができている事から、当該年度の当初の研究目的を概ね達成できたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
機能性グライコベシクルの作成ができていることから、当初の予定通りに研究が進んでいる。従って、大幅な研究計画の変更はない。H30年度は、予定通り得られたベシクルの細胞内動態の把握、ベシクル内核酸増幅反応を行なう。さらに、得られた核酸内包グライコベシクルを用いてRenca細胞へのデリバリーを行ない、mRNAの抑制能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度では、主に材料の合成を行なったために必要な経費が当初の見込額と異なった。しかし、H30年度では、核酸合成用の基質、酵素や、リアルタイムPCR用の器具など高価な試薬が必要となるため、次年度使用額を割り当てる予定である。
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