研究課題
最近、化学合成に関して、実験室からプラントへのスケールアップを容易にする反応器としてマイクロリアクターが注目されている。一方、生体は、細胞や細胞内小器官を反応器や分離器の単位とすることで、分子レベルで反応・分離・精製を連続的かつ高効率に行う、マイクロリアクターより高度なマイクロ物質流通システムと言える。研究代表者は、物質の輸送と変換の過程を分子レベルで最適化する人工的なマイクロ物質流通システムを用いて、化学製品の究極的な精密合成や人工的な化学シグナル伝達システムの構築を目指している。そのための反応器に求められる機能は、物質の投入・反応・回収の制御である。人工的なマイクロ物質流通システムを実現するための反応器の単位として、液晶マイクロカプセル (液晶MC) は有望である。液晶MCは液晶をシェルとするコアシェル型二重エマルションである。液晶は、異方性を持った流体であり、刺激に応答して物性が劇的に変化する (e.g. 液晶ディスプレイ) ため、反応器に転化できると考えられる。つまり、MCの内外を隔てる液晶シェルによって原料の投入と生成物の回収を制御し、反応中の物質を選択的に保持する機能が実現できるはずである。一般的な液体をシェルとするMC (液体MC) における物質の輸送の機構としては、単純な拡散に加えて、界面活性剤が促進する拡散が提案されてきたが、定量的で普遍的な議論はなされてこなかった。本研究では、化学発光および蛍光の強度の経時変化を測定することで、MCのシェルにおける物質拡散を定量的に議論し、反応器としての液晶MCの物質拡散機構の解明することを目標としており、前年度までに目標はほぼ達成している(論文執筆中)。本年度は、液晶MCの内外における浸透圧差を利用した高効率液晶MCレーザー発振器の作製に成功し、論文として報告した(Adv. Opt. Mater. 2020)。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
Advanced Optical Materials
巻: 8 ページ: 1901363~1901363
10.1002/adom.201901363