研究課題/領域番号 |
17K19035
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鶴田 健二 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (00304329)
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研究分担者 |
石川 篤 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90585994) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 音響ダイオード / フォノニック結晶 / トポロジカル音響体 / 音響導波路 / 表面弾性波 / 音響メタ表面 / 光学可視化法 |
研究実績の概要 |
(A)ヘテロ周期構造による音響ダイオードの設計:これまで我々が設計した圧電体/樹脂の周期構造による1次元(2端子型)音響ダイオードは可聴域での透過損失が大きいという問題があった。昨年度,ヘテロ構造の境界領域にインピーダンス整合をとるための遷移領域を設定したフォノニック構造の最適化,ならびに界面の幾何学形状を変えることによって,SモードからAモードへの変調を誘起する新たな構造を考案した。本年度は,数値シミュレーション,ならびにその構造を試作・評価し,設計通りの透過損失低減効果を確認した。 (B)間接バンド間遷移に基づく非相反音響導波路:昨年度に引き続き,間接バンド間遷移を用いた導波路の数値設計と最適構造・材料の探索を行うことと並行し,変調領域をループ型にして可聴域~超音波領域における高い変換効率を実現する新しい変調方式の基本原理を考案,数値シミュレーションによる検証を行った。 (C)近年注目を集めるトポロジカル音響体構造の設計に着手,2次元単位格子中の3回対称性を持つフォノニック構造のバンド設計を数値的に行い,上下対称のトポロジカル構造の界面エッジ効果による高効率の表面弾性波導波路の設計と数値シミュレーションによる透過特性評価を昨年度から開始,今年度はさらに,水中の金属丸棒の配列のみで新しい3回対称構造を形成でき,これまで提案されたトポロジカル構造と同等のエッジモード伝搬が可能であることを,数値シミュレーションと実験によって証明することに成功した。 (D)広帯域で高い吸音特性を示す新しい音響メタ表面構造を提案し,数値シミュレーションと音響管を用いた実測によってその効果を証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実施概要の(A)1次元ヘテロ周期構造による音響ダイオードについては,インピーダンス整合法に加え,界面幾何構造の最適化という新しい視点の導入によって,課題となっている透過効率の向上に理論的にも実験的にもある程度実証できた。(B)間接バンド間遷移に基づく非相反音響導波路については,変換効率向上につながる新しいループ型変調構造を,実証実験が可能なレベルの構造スケールで考案できた。(C)昨年度から開始したトポロジカル音響体構造の最適設計に関しては,構成が容易な新しいトポロジカル音響構造を考案し,高効率の導波特性を数値的にも実験的にも実証できた。また,2019年秋の応用物理学会においてその成果を発表した結果,注目を集めた。加えて,(D)新たに音響メタ表面の広帯域化による音響エネルギーのアイソレーションの可能性を高めた。特に,これら(C)(D)については計画以上の成果といえる。 従って,全体としては「当初の計画以上に進展」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度および本年度に考案・実験実証した非相反ラムは伝搬を制御するフォノニック構造と,構成が容易な新しい2次元トポロジカルフォノニック結晶については,さらに構造の最適化を試み,かつ,アクティブに再構成可能な構造へと進化させる。 また,実際のデバイス応用のためには高集積化できるような構造で上記原理実証した効果を発現する必要がある。そのために,薄膜上の表面弾性波に対して非相反性ならびにトポロジカルエッジモードを形成するフォノニック構造の設計・試作・評価を行う必要がある,そのために,現在,実験・評価に高い技術を有する他大学・企業の研究グループとの連携を開始しており,特に微細加工技術を用いるために必要な予算・実験設備確保のため,より大きい予算のプロジェクト経費獲得を目指している。 さらに,テラヘルツ領域でトポロジカルエッジモードを実現するナノスケール構造の設計も目指しており,特に,圧電体のナノ構造フォノニック構造と磁性体とを組み合わせる新しいトポロジカルスイッチなどの新しいデバイス動作原理の理論設計と実験実証も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大のために,学内での実験実施計画や,参加・成果発表予定だった国際会議および国内学会が軒並み中止(またはバーチャル開催)になり,予算計上していた実験消耗品費と旅費が執行できなくなったため,予算残額を繰り越して,令和2年度中に,主に成果発表旅費として執行を予定している。
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