昨年度までの結果を数値計算から検証し、得られた熱起電圧が非対角効果によるものであることを確認した。非対角効果による熱起電圧上昇に向けて、グラフェンのゼーベック係数に異方性を持たせるため、基板上に設けた凹凸上にデバイス作製時の表面張力によりグラフェン膜を一軸方向に伸張して固定し、凹凸のエッジで歪みが印加されるようにした。ラマンスペクトルのピークシフトから、0.3%程度歪みが印加されていることが明らかとなったが、このときのゼーベック係数は歪みを印加していないものと比較して、ほとんど変化が見られなかった。ゼーベック係数はフェルミエネルギー近傍のキャリア密度変化に依存するため、バンドギャップが形成され、より大きなゼーベック係数を得るためには、さらに印加歪み量を大きくする必要があることが今後の課題として挙げられる。
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