研究課題
高い結晶性を有する細孔壁を構築することにより,通常の金属ナノ粒子では形成が難しいとされている(熱的安定性の低い)高次結晶面やステップ,キンクなども,細孔空間の露出表面には多く存在させることができる.これらの場所には,配位不飽和の金属原子が多く存在しており,Pt(111)結晶面と比較し,活性の高い面(特に,high index面)も確認できており,電極触媒反応を大幅に促進させることができた.反応としては,メタノール酸化反応,酸素還元反応なども試みた.また,計算化学のアプローチから,格子の歪みと酸素の吸着エネルギーの関係を調査し,格子の収縮による酸素吸着性の低減,あるいはその逆を生じさせることで,それぞれの結晶面での活性を最適化させることができることがわかった.例えば,酸素還元反応を考えた場合には,酸素吸着性は極めて重要な因子である.また,合金化による格子の歪みと電子数の微調整を利用してPtのdバンドエンジニアリングが理論的にも実験的にも検討され,体系ができつつある.溶液中に異種の金属イオンを溶存させることにより,合金への展開を実施し,多孔体化するのに成功している.
1: 当初の計画以上に進展している
提案書に記載した研究計画に沿って順調に進んでいる.実験上乗り越えられない,大きな問題なども生じていない.
高性能の電子顕微鏡を駆使し,詳細なメソ空間の容積,表面積に加え局所的な幾何学的な考察を行うことができる.ガウス負曲面に露出したメソ細孔の全体像(平均像)と局所像(微細構造像)を直接観察することにより,ゲスト種の外部からのアクセス性に加え,反応場を考慮に入れた最適構造の模索が可能になる.金属細孔壁の局所配位構造や金属元素の酸化数を放射光XAFS測定により求める.酸素還元反応における物質の挿入・脱離に伴う価数変化と結合間距離をその場in-situ XAFS法により計測し,ナノ空間材料における電荷蓄積機構などを明らかにする.多孔体材料では,その構造中での物質の反応機構を正しく理解することが,構造を最適化する上で重要である.また,理論計算を用いた解析では,主に第一原理計算手法を用いて,多孔質材料中の階層的空間(ミクロ孔,メソ孔)におけるイオン等のゲストと多孔質材料であるホストとの相互作用を解明し,他の解析手法と連携しながらその特徴的な構造を特定する。特に,メソ細孔中の金属表面におけるゲスト-ホスト相互作用,メソ細孔における広がった空間でのゲスト-ホスト相互作用に着目し,計算に必要な最適モデルの設計,原子構造解析,エネルギー解析,電子密度・電荷分布解析,状態密度解析,ELNES/XANES解析などを用いて,原子・電子構造を明らかにする.これらの解析結果によって,金属表面とゲスト種や,メソ細孔サイズの違いによる相互作用の変化を明らかにできるので,ゲストの最適な貯蔵・輸送を設計するための基盤的な必要情報・指針を提示できる.これらを合成へfeedbackさせて,メソ空間完全制御により,高次結晶面やステップ,キンクなどを最大限細孔表面に露出させ,触媒反応を大幅に促進させる.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件)
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