研究課題
本年度は、まず透明導電性酸化物を使った狭帯域熱放射構造の実証を行った。透明導電性酸化物には、その代表格であるITOを用い、ITOとアルミナとITOから成る3層構造を設計した。試料構造は、最上部のみITOの周期ディスク構造が最密充填で配列していて、残りの二つの層はどちらもパターンのない膜である。このような構造を作製すると、金属を使った構造と同様に、上部のディスクの大きさに既存した電磁場共鳴が中赤外域で励起され、吸収率が狭帯域化して波長選択性を持たせることができる。このような構造を加熱すると、熱力学のキルヒホッフの法則に従い、吸収に対応した狭帯域な熱放射が実現できる。本構造は、スパッタ成膜とナノ球リソグラフィーとドライエッチングを組み合わせた微細加工法によって作製し、加熱した試料の熱放射スペクトルはFTIRで測定した。その結果、設計通り吸収に対応した狭帯域な熱放射スペクトルを確認した。今回のように全て酸化物で狭帯域の熱放射を実現した例は未だに報告例が少ない。微細構造によって熱放射を集光する課題は、昨年度に引き続いて取り組んだ。効率よく集光する構造を探索するのが主目的のため、今年度も放射率の高い基板に金属の薄膜を製膜しパターニングすることで、構造を作製した。基板にはシリコンとガラスを使い、レーザー描画装置でフォトリソグラフィーを行うことで、アルミ薄膜にパターンを形成した。作製した試料は、シリンドリカルレンズに対応する一次元パターンと球面レンズに対応する二次元パターンの2種類である。試料からの熱放射の空間プロファイルは、対物レンズ付き赤外線カメラで試料とカメラの距離を徐々に変えながら撮影し、独自の画像処理を行うことで得た。一元パターンからは明瞭な熱放射の集光は確認できていないが、二次元パターンからはパターンの最適化を行うことで熱放射の集光が確認されつつある。
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