ナノメートル厚さのパラジウム薄膜を作製し,水素化過程における伝導測定と,共鳴核反応法による水素量の深さ分解定量を行うことで,パラジウム水素化物の形成過程とその物性を調べた.水素化は,水素ガス曝露と水素イオン照射の2つの方法で行った.水素ガス曝露では熱力学的に安定な水素化物が形成されるのに対して,水素イオン照射では準安定状態が形成されることを見出し,準安定状態は時間とともに安定状態に緩和することを明らかにした.この緩和過程の温度依存性を調べ,高温では熱活性化過程,低温では量子的なトンネル過程で緩和が生じることを見出した.さらに50Kでの抵抗の異常について,水素化物の構造との相関を明らかにした.
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